雲があってもなくても、晴れは快い。
「青い空より、雲があったほうが空っぽくないですか?」
「青空は空そのものなのに、ぽいとかぽくないとかある?」
「だって青空の色ってエラー感強くて……」
青空はパソコンのブルスクに似てると現代っ子は嘆いた。
【快晴】2024/04/13
ちゅ、雑駁でごめん。
空は遠い。
伸ばしても触れないし、行くのにはきっと時間がかかる。実際おじいちゃんは82年かかった。
でも、私はそうかからなかった。先行きへのどうしようもない不安は簡単に人を殺す。
コンクリートに叩きつけられて、やけに近く見える真昼間の、冷ややかなまでの夏空を眺めている。
身体の感覚がふっ、と薄れる。
空へ行くのだと、何となく思った。
が――
「……」
身体はコンクリートにただめり込んでいく。
声を上げることはできない。カラになった私の体と青空が見える。
人は殺生罪を犯せば地獄に行くらしい。
私は、私と、その生命維持のために多くの生き物を殺した。
二つ以上命を奪えば極刑なんて、何だか法律みたい。
沈んでいく視界、カラの体だけが空に上っていくように見えた。
【遠くの空へ】2024/04/12
インフルの吸引剤ってのみにくいですよね。知らないってそんな殺生な
言葉にできないという言葉がある。
できている。
あなたへの愛を言い尽くせる言葉を知らない。
愛しい人にはかっこつけたいから短く、この細胞一つにまで注ぎ込みたい愛を形容できるくらい重く――。
「俺の愛は白金だ!」
密度が高い白金は、小さくも重く、高い融点で気化しにくい。俺の愛を形容するのにこれほどぴったりな物質はこの世界に存在しないだろう。
愛しい彼女はしばらく言葉を失っていた。聡明な彼女のことだ。俺の意を汲み取ろうと考えてくれているに違いない。
「返事はいつでもいいよ! 待ってるから」
「待って――」
……彼女が言うことには、告白は可能な限りシンプルな方が良いらしい。
誰かと誰かが付き合うのに、告白の台詞が大きくプラスになることはない。告白の台詞が良かったから付き合ったなんて話聞いたことある? と真顔で聞かれて俺はたじろいだ。
彼女は俺のことが好きだったらしい。しかし、こじらせている人との関係は面倒だし、告白に選ぶ言葉もとんとセンスが足りていないと振られるどころか告白をなかったことにされた。
その時の心情は、まあ、その……言葉にできない。
【言葉にできない】2024/04/11
満開の桜よりも春の陽よりも
肩越しのあなたの笑顔こそが春に見えた。
第一高等学校の入寮式を終えて、この手紙を書いている。返事を読んだ。忙しいのなら、と貴女は言うが、吾妹が恋しくて不可無いのだ。寮歌の「春爛漫の花の色」という詩に貴女と見た桜花を思い出す。卯月の爛漫な君に、また会える日を楽しみにしている。
【春爛漫】2024/04/11
インフルで頭が回りません。今回のようなヤマオチなしの雑駁な文章が少し続きます。
「もちろんだよ。誰よりもずっと愛してる」
「……え、別れよ?」
元カレのポカン顔をボコンして、リズリサの鞄を振り回して帰路につく。エナドリは一口飲んでゴミ箱に突っ込んだ。
比較でしか伝えられない愛なんて私はちっとも欲しくない。
比較対象に割いた時間を私に割いてほしかった。「愛してるのはお前だから」って言い訳が浮気の免罪符にならないみたいに、余所見脇見の言い訳は「君のため」では済まない。
次の彼氏は童貞にしよ……。マジありえんし。
世界なんて知らなくていいから、とっとと私だけを愛せ。
【誰よりも、ずっと】2024/04/09
4月の出会いはろくなもんじゃないですね。