揺れるカーテン。冷たい風が吹いてくる。
テーブルの上には空き缶が数本。
朝6時とは思えない空気。
朝の清々しさがなく、
まるで深夜のまま時が止まったようだ。
乱れるベット、下着。
その横には生まれたままの姿のあなた。そして女。
「ねえ。」
......
「ねえ。ねえ!」
眠そうな女。慌てるあなた。
あなたと目が合う。
もういい。
あなたから目をそらす。
覚悟は出来てる。
再びあなたと見つめ合う。
「もう、言い訳すらしなくなったんだね。」
「......」
「いいよ。全部終わりにしよう。」
涙すら出ないこの気持ち。
私には、あなたしかいなかったのに...。
『終わりにしよう』
その繊細な花をさわると、
花は傷ついてしまった。
傷を心配し優しく撫でると、
さらに傷ついてしまった。
いっそのこと引っこ抜いてしまうと思うが、
俺にそんな勇気はない。
ただ花を抜くだけじゃないかって?
違うんだよ。
この花は、彼女と育てた花なんだよ。
あれは確か、ちょうど1年前くらい?
彼女が「これ育ててみようよ!」と突然買ってきた。
その後半年くらいは仲良く育てたんだけどな。
次第に喧嘩が増えて、浮気された。
浮気でもしないと心が持たなかったんだろうな。
俺と別れてからは一途に頑張っているらしい。
わかってると思うが、
俺はその花も捨てれないくらい未練タラタラだ。
本当に好きだったし、今も好きだ。
まったく、繊細な彼女だった。
少しのことで傷ついて、
1度傷つくと何でもネガティブにとらえて。
まるでこの花のようだったよ。
『繊細な花』
1年後、あの人は16歳になる。
今年のように祝えて、今年のように喜んでもらえて...
来年もそんなふうになるといいな。
1年後の今日、また連絡しよう。
大好きなあの人に喜んでもらえるように......。
『1年後』
哀愁をそそる秋の終わり。
神社の隣の、紅葉がつくる道。
来月2歳になる息子を抱っこして、
今年もその道を歩く。
去年は、5歳の娘と手を繋いできたな。
今年は、娘は妻に預けてるけど...。
「なあ、ねえねと来たかったか?」
「やや!ねえねといたかった」
多分、娘が居ないのが嫌だという意味だろう。
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「来年は、家族全員で行こう。
あなたが3人目を産み終わったら。
あなたと、息子と、娘と、3人目の子と、僕の5人で。」
そう言うと妻は微笑み、涙を流した。
おでんのたまごが大好きで
コンビニに行く度買ってたこと、
幼稚園が嫌で、ずっと泣き叫んでたこと、
弟が産まれて、毎日可愛がっていたこと.........。
これから先も、忘れられない思い出。
1年前に亡くなった
大切な娘との、5年間。
来年はきっと、5人であの道に――。
『哀愁をそそる』
鏡の中の自分は、鏡の外の自分にとらわれている。
鏡の外の自分が動けば、鏡の中の自分も同じように動く。
鏡の外の自分が動かない限り
鏡の中の自分が動くことはない。
鏡の中の自分とは
唯一誰でも操れる操り人形なのかもしれない。
『鏡の中の自分』