泡藤こもん

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7/11/2023, 4:36:54 PM

もうとっくに忘れられていると思っていた。
「元気にしてますか」なんて、慣れない敬語につい笑ってしまう。
あの頃なら「元気?」とか。ううん、もっと気の抜けた態度かな。変なスタンプをひとつだけ送ってきて、こちらから反応を返すのを待っていた。
「久しぶり!元気だよ」最後に笑顔の顔文字を付けて送信。同時に、アイコンをタップ。
プロフィール画像が恋人とのキス画像、音楽がおちゃらけたラブソングになっているのを見て、即座にブロックした。

7/1/2023, 4:04:22 PM

彼が手を振る。私も振り返す。
はつらつとした、生気に満ち溢れた笑顔。血色の良い頬は丸みを帯びて、にいっと上がった口元からは真っ白に輝く歯が覗いていた。
きっとすぐ、私のことなんて忘れてしまうんだろう。
どこか諦めた心境で、おざなりに手を振る。かたん、と電車が動き出す。
その瞬間、彼がぐっと拳を握り込んで。唇を食い締めて。きらり、瞳が輝いたような気がして。
えっと気付いたその時には、もう車窓には彼の姿は無かった。

6/29/2023, 6:53:04 PM

ずん、とそびえ立つ雲は、それだけで暑さの訪れを予感させる。
ブルーハワイシロップを薄めたような水色に、山から生えた木や植物のようにまっすぐもくもくと伸び上がる、真っ白な雲。
手をどれだけ伸ばしたって、ちっとも届きやしない。
だから、せめてもとソーダ味のアイスを手に取ってしまう。

6/28/2023, 6:06:42 AM

『ここではないどこか』へ。そう銘打たれたレーベルが気に入っている。
どれも、異世界だったり。貴族から庶民へ、はたまたその逆へ。あるいは後宮のような特殊な環境へ。思いもかけず、はたまた今までの自分から脱却する意図で。それまでとまるっきり立ち位置の変わった主人公達が奮戦する話ばかり。
それを楽しむ私はいつまでも自宅のソファーの上で、心ばかりをどこかへ飛ばしている。

6/22/2023, 4:47:09 PM

当たり前、が崩れるのか苦手だ。
例えば、朝一番に薬缶に水を入れて、お湯を沸かすこと。そして珈琲を入れること。
時間通りに家を出ること。
向かう先があること。
帰るための場所があること。
踏みしめる足があること。
空を見上げることの出来る、瞳があること。
どれも失うことが恐ろしすぎて。
今日も、ちっぽけな自分を抱きしめて、「幸せなんだ」と言い聞かせている。

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