百瀬御蔭

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12/19/2024, 9:52:26 AM

パチパチと薪の爆ぜる音がする。
降り注ぐ雨の音は夜と共に去り、雪に変わっていた。
窓の外を眺めていたら、後ろから抱きしめられた。差し出されホットワインを飲むと、甘くてスパイシーな味がした。口数こそ少ないが、一緒にいて心地が良い。
窓に映る彼はいつもより柔らかな笑みを浮かべていた。

「この熱を君にも」
冬は一緒に

12/17/2024, 9:59:26 AM

苦しく重くなる意識の中で、貴方の手の感触がずっと残っている。

お題
風邪

12/15/2024, 1:32:08 PM

吐いた息は白く、吹き抜ける風は冷たい。そんな寒空の下、二人は歩いていた。
「……君と出会ったのも、こんな寒い日だったか」
頭から血を流していた少女は、生きているのが不思議な状態だった。家主である男は懸命に手当てをし、今もこうして2人で静かに暮らしている。

降る雪が見上げる星空も、在るべき道も覆い隠してしまう。男は少女の髪に触れ、末端の一束に口付ける。
彼女は気付かない。親切の裏側に潜む、男の仄暗い欲望に。

『氷雪の聖域』

お題
雪を待つ

12/15/2024, 9:28:29 AM

聖誕祭が近付き、街は華やかな光で彩られている。私も幼い頃はクリスチャンであり、教会にも足を運んでいた。
「ただいま」
差し出された手を繋ぎ、ゆっくりと歩き出す。暗闇に閉ざされ、死地へ赴いた日々は過去のもの。
私達が勝ち取った平和は、今もこうして続いている。
「無事に帰ってきてくれて、ありがとう」


『祝い事は貴方と一緒に』
お題
イルミネーション

12/12/2024, 12:41:32 PM

Alice, Alice.
Go away, go away.
You're a grown lady now.

But I still love you.

アリス、アリス
どこへでも行ってしまえ
お前はもう大人なのだから

それでもお前を愛しているよ

*

 母はアリスの成人を見届け、その生涯を閉じた。
強い人であったけど、今思えば私たち姉妹の前での芝居だったのかもしれない。

 子爵の父は愛人を作り、ありもしない罪を着せて身重の母を捨てた。だが幸いなことに、祖父母の元に身を寄せることができた。母もまた、名前を隠してこの悲劇を本に仕立て上げた。その後も貴族社会の光と闇を描き続け、市井の人々を味方に付けていた。

 祖父母、そして母の残した莫大な遺産。これを二分し、余ったお金は旅行に使った。国中を渡り歩き、美味しいものを食べた。最後に訪れた海辺の町でひとしきり休んでから帰るつもりだった。しかし、オルニウス辺境伯がアリスに一目惚れしてから事態は急変。
彼女もオルニウス領の空気が良かったらしく、二人は婚約した。

「アハハ!その名前だけは呼ばれたくなかったなぁ。まぁいいや、アリスを幸せにしてくれるなら……それでいいよ」

 あの子は強い。見た目こそ可憐な少女だが逞しさもあって、有象無象たちなら振り落とされるだろう。

「また会おうね、アリス。次会うとき、この国が知る形でなくなったとしても……」


『夜明けを目指して』

お題
心と心

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