百瀬御蔭

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Alice, Alice.
Go away, go away.
You're a grown lady now.

But I still love you.

アリス、アリス
どこへでも行ってしまえ
お前はもう大人なのだから

それでもお前を愛しているよ

*

 母はアリスの成人を見届け、その生涯を閉じた。
強い人であったけど、今思えば私たち姉妹の前での芝居だったのかもしれない。

 子爵の父は愛人を作り、ありもしない罪を着せて身重の母を捨てた。だが幸いなことに、祖父母の元に身を寄せることができた。母もまた、名前を隠してこの悲劇を本に仕立て上げた。その後も貴族社会の光と闇を描き続け、市井の人々を味方に付けていた。

 祖父母、そして母の残した莫大な遺産。これを二分し、余ったお金は旅行に使った。国中を渡り歩き、美味しいものを食べた。最後に訪れた海辺の町でひとしきり休んでから帰るつもりだった。しかし、オルニウス辺境伯がアリスに一目惚れしてから事態は急変。
彼女もオルニウス領の空気が良かったらしく、二人は婚約した。

「アハハ!その名前だけは呼ばれたくなかったなぁ。まぁいいや、アリスを幸せにしてくれるなら……それでいいよ」

 あの子は強い。見た目こそ可憐な少女だが逞しさもあって、有象無象たちなら振り落とされるだろう。

「また会おうね、アリス。次会うとき、この国が知る形でなくなったとしても……」


『夜明けを目指して』

お題
心と心

12/12/2024, 12:41:32 PM