母レベッカがこの世を去った。
私が家督を継ぎ、戦後処理を終えて一ヶ月もしないうちに。
妹が生まれて間もなく、入れ替わるように父は急逝。夫不在のブレヴォリス家を守るために奔走し続けた彼女に、心休まる時はあったのだろうか。
母には感謝してもしきれない。忙しく、外圧が強まる中で家族で集まることは少なかった。しかし、年に一度、皆の誕生日を祝うのが楽しみだった。
この恩は必ず返すと誓ったはずなのに。
間に合わなかったことがただただ悔しくて仕方がない。いつの日か子を成し、母に孫を抱いてほしかった。
「ロランス……準備はできたかしら」
侍従長であり、母の親友であったフリーダ。
忙しい母に代わり、私たちを育ててくれたもう一人の母。今は落ち着いているけれど、泣き叫ぶ姿に胸を締め付けられた。現に、こうして目を腫らしているままだ。
「皆を待たせてしまっているのなら、申し訳ない。すぐに行く」
母の棺、その前にはたくさんのカーネーションが添えられていた。亡き父の遺志を受け継ぎ、民にも寄り添い続けた母。継承の儀は行わなかったが、彼女も間違いなく歴代当主と同じように責務を果たした。
「亡きレベッカ・ブレヴォリスを偲び……」
皆が喪服に身を包む、長い夜が始まろうとしている。悲しみに暮れ、立ち止まる暇はない。それでも、前に進むために。
『我らの母を偲ぶ』
喪失感
「お姉様のところには行かせない、私が相手よ!」
エレーヌはロランスに向けられた剣を弾き飛ばした。突然降ってきた妹に驚き、腰を抜かしてしまったり
「早く!ここは私がなんとかするから!」
「わかった……生きて帰るのよ」
令嬢とは思えぬ特攻に誰もが呆気にとられ……
wip
おどるように
『踊る剣閃』
地平線の向こうから亀裂が広がる。
東から昇る太陽が夜明けを告げる。
wip
時を告げる
さくり、さくり、と石灰色の砂浜に足跡を残す。細かく砕け散った事象が瓦礫に降り積もり、荒廃した世界を演出していた。
「帰れそうにないっすねぇ……」
苦々しく呟く彼に同意する。長く留まるには不向きな環境、重苦しい空気と潮風が混じり合って気分は最悪だ。
「ま、アンタの為なら頑張りますよ」
フードの中から端正な横顔が覗く。その目は遠く水平線の向こうを見据えている。
「帰ったら一杯付き合ってくれよな」
『尸を渡る』
貝殻
「煌」と「燦」の違いはなんだろうと考える。
前者は燃え盛る炎がもたらす光、人知の及ばぬ繁栄というべきか。
後者もまたきらめき。こちらは鮮やかさで人を魅了する方向が強いらしい。
『星降る夜の走り書き』
きらめき