伝えきれぬ後悔とはいつまでも心に残る。相手が黄泉の国へ渡ってしまえばなおさら。
今は亡き彼にも筆で伝えたが口にすることは叶わなかった。だから、今代の彼には直接伝えることにする。
自分の思いの丈を伝えると、ほろ酔い気分ののふわふわした笑顔が一変した。
見開かれた目に感情の膜が張られている。
Title「返歌は恋情を添えて」
Theme「愛を叫ぶ。」
May.11
結い上げた彼の髪に、何かが付いていました。取ろうと手を伸ばすと、ふわりと羽を広げて……個性的な髪飾りに笑みがこぼれました。絹の様な柔らかな髪が花を思わせたのでしょう。
銀糸を束ねる蝶と、書き物をする眼差し。
時が止まるような感覚に震えながら、カメラを構えます。シャッターを切った直後、蝶は飛び立ち、彼の視線は私に向いたのです。
Title「白き春を捉える」
Theme「モンシロチョウ」
空いた右手で頬を撫でる手つきは、子供をあやすそれ。眠れぬ時はそっと目を塞ぎ、眠りに導く。その姿を見たことはない。だが、手のぬくもりと、達筆な書き置きが存在を証明している。
そんなある日、私は思い出した。今は亡き彼の、最期の言葉を。滲む視界の淵に、馴染み深い黒の指が映り込んでいる。
Title「姿無き忠義」
Theme「忘れられない、いつまでも」
May.9
息が詰まるような暗い日常に呑まれそうになる。そんなときは、彼女が落としたであろうお守りを握る。手放し難い暖かさが、僕を守る最後の砦。
穏やかな春の香りと、濡羽色の髪。心を溶かす柔らかな声。朧気な記憶の中で、今も鮮明に残っている。
君を主と呼ぶ日を夢見ながら、僕は望まぬ夜を凌ぐ。
Title「幻惑の桜」
Theme「初恋の日」
May.7
思い返してみれば、彼と出会った日もこんな雨でした。逃げていた身では、大柄で刀を携えていた彼は恐怖そのものだったのです。
「こちらに。この夜を凌ぐくらいならば」
真剣に向き合ってくださる彼の好意を、誰が無碍にできるのでしょうか?真っ直ぐな目と温かな手のひらは、あの日から変わらないのです。
Title「我が身を灯す者」
Theme「君と出逢って」
May.5