百瀬

Open App

空いた右手で頬を撫でる手つきは、子供をあやすそれ。眠れぬ時はそっと目を塞ぎ、眠りに導く。その姿を見たことはない。だが、手のぬくもりと、達筆な書き置きが存在を証明している。
そんなある日、私は思い出した。今は亡き彼の、最期の言葉を。滲む視界の淵に、馴染み深い黒の指が映り込んでいる。

Title「姿無き忠義」
Theme「忘れられない、いつまでも」

May.9

5/9/2024, 1:41:33 PM