「降り止まない雨」
君を亡くしてから何度夜明けを迎えたのだろう。心にぽっかりと空いた穴を塞ぐものは何も無い。
君がいなくとも世界はまわり続ける。でも、僕にとって君のいない世界はつまらない。
「流れ星に願いを」
双子座流星群がもうじき見られるという話を聞いた私達天文学部はとある場所へと向かった。大学から少し離れた所に位置している山である。天に最も近いであろうこの山は、地上の光など遥か遠くで一切届かない。あるのは天から降り注ぐ月明かりと星の光だけだ。
「晴れて良かったな。雲もほとんどないから星がよく見える」
「そうですねー部長」
冷たい夜風が肌を撫でる、山上ということもあって余計に冷え込む。こういった場所のほうが都合が良いから仕方ないんだけど。
「あ、流星群始まったよ!」
満天の星空と降り注ぐ流星が視界いっぱいに映る。ここにいるのは星に魅入られた同士、進む道は違えど星に対する思いは同じだ。
来年も、またこうやって星が見られますように。
「雫」
ぽつり
降り注いだ雨粒は地面をまだら模様にして、やがて濃い一色に染め上げる。鼻先をくすぐる雨の匂いと傘を持ってきていないことに気が付いて顔を顰めた。
「傘、持ってきたから一緒に使お」
「俺が持つよ、貸して」
ありがと、小鳥の囀りのような声で感謝されると共に傘を手に取り駅に向かって歩を進めた。傘を彼女側に傾け濡れてしまわないようにする。雨にさらされた肩は冷えるけど、君には濡れてほしくないから。
「何もいらない」
政略結婚なんて古臭いものが今でも存在するという事実を、私は身を持って知った。実家からの手紙には私に政略結婚をさせるという旨と相手の写真等が同封されていた。会ったこともない何も知らない相手と結婚するなんて虫唾が走る。手紙をゴミ箱に投げ捨て、ベットに身を沈めた。
窓の外に広がる満天の星空、開かれた窓からは冷たい風が吹き込み体温を奪ってゆく。
今自分がやっている事を続けられなくなるのは嫌だ。ずっと昔からやりたくて、ようやく親の許可が降りて家から出られたというのに。
私は所詮蜘蛛の巣に囚われた蝶なのだ
地位も名誉も何もかも捨てて、貴方と生涯を共にしたかった。貴方が私を想ってくれるのならそれ以上は望まない。
「届かぬ想い」
左手の薬指に嵌められた銀色に輝くそれは.僕の心に深く突き刺さった。前まではなかったハズなのに。
「先輩、もしかして結婚するんですか?」
「昔からお付き合いしていた人とね。とても良い人よ」
研究室に差し込む陽光に照らされ乙女の顔で幸せそうに目を細める先輩は、とてもきれいで天女のようであった。
貴女の想う先に僕はいない。