バスクララ

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10/27/2025, 12:58:01 PM

彼が誰かと話すたび、笑うたびにイライラしてしまう。
この気持ちの名前は嫉妬。
私の彼なのに。私だけの彼なのに。
そう思ってしまうのはたぶん良くないことだとわかってる。
だけどやっぱり彼の楽しそうな顔や嬉しそうな顔を見るたびに、彼を閉じ込めて私しか見えないようにしてしまおうかと考えてしまう。
そうでもしないと消えない焔なのだ。この嫉妬は。
だけどそれは最終手段。私しか幸せになれないということは充分にわかってる。
彼が幸せになれないのならするべきじゃない。私はそう強く決意している。
でもいつか胸に渦巻くこの焔は、その決意まで燃やし尽くして私の本性を解放してしまうかもしれない。
そうなってしまう前に、私は彼の前から姿を消すべきなのだろう。
本当に彼の幸せを願うのなら。
彼にとって私なんてただの友達。彼女でもなんでもない。
卒業と同時に友達が減るなんてよくある話なのだから彼はきっと気にも留めないはず。
だからそれでいい。
私では彼を幸せにできない。
ただそれだけの話なのだから。

10/26/2025, 2:55:56 PM

少女はずっと問いていた。
楽園にはどんな生き物がいるのか、楽園ではずっと共にいられるのか……
何も言わぬ父にずっと問いていた。
楽園という心惹かれる場所への強い興味。
その終わらない問いは少女の命が尽き果てるまで続くことだろう。
あどけないその問いに答える者はこの世にもういないと知らぬまま。


§


元ネタはS◯und Horiz◯nの『エルの楽園[→side:E→]』です。
中二病真っ只中の頃にこの曲を含む楽園幻想物語組曲と出会い、衝撃を受けた記憶があります。
良かったらぜひ聴いてみてください。

10/26/2025, 4:41:51 AM

彼の頭で揺れる青と白の羽根飾り。
彼の幼なじみでもある村の巫女が彼のために作ったもの。
赤子の頃、村へと流れついた彼にとってこの羽根飾りは村の一員である証なのだ。
そして彼を含め村人は誰も知らなかった。
石となった大樹がある禁忌の島に住んでいる呪われた人々。
外の世界の住民にはそう思われていることを。
そしてとある男を除き、世界の誰もが知らなかった。
大樹の奥深く……根っこの奥底におぞましいものがあることを。
そしてそれらを巡る戦いに全世界が巻き込まれることを誰一人として、知らない。


§


元ネタは聖◯伝説4です。
悪い意味で当時は話題になりましたが……まあ、曲とグラフィックはとても良かったのでもし興味があれば調べてみてください。

10/24/2025, 2:32:31 PM

誰にも知られたくない。
誰にも内緒。
だから私は暗闇に箱を隠すの。
私だけしか中身を知らない。
誰かの前で箱を開けるなんて、そんなこと絶対にしない。
もし誰かに知られたらその時点で私だけの秘密の箱でなくなるもの。
人間はだいたい好奇心旺盛で知識欲があるから、あの手この手で箱の中身を知ろうとする。
だけどあれは私だけのもの。誰にも知られるわけにはいかないの。
私の思うままに、私の好きなようにしたい。
誰にも秘密で。
じゃないとあの人と私が離れ離れになっちゃうから。

10/23/2025, 1:10:37 PM

「君、無人島に行くならば何を持っていくかね?」
 二人だけの文芸部。そこで先輩がクロスワードパズルとにらめっこしながらそう訊いてきた。
 私は次のコンクールに出す小説のプロットを考えているというのに、自由な先輩だ。
 ……まあ、今に始まったことじゃないけど。
「無人島なんかに行きたくはないですけど……
どうしても何かを持っていくと言うのなら水と食べ物ですね」
「うむ、なるほど。君はそういう考えなのだな。
かくいう私も無人島には進んで行きたくはない。だが何か持っていくとなれば虫よけスプレーを持って行こうと考えているな」
「はあ。なぜですか?」
 先輩はよくぞ訊いてくれた! とばかりに目をキラッと輝かせにんまりと笑う。
 あ、スイッチ踏んじゃったと思った時にはもう遅い。
「無人島と言うからにはそれなりの理由があって人が住めない、住んでいたがいずこかへ去ったのだろう。
どちらにせよ人の手が入っていない完全な野生環境には相違ないのだ。
そこに人が入ってきたら格好のエサになる。よほどの強者でない限り人は脆弱だからな。
危険な獣だとかは視認できるから状況によっては避けることもできる。
だが虫、とりわけ蚊などはどうだ? いつの間にか刺されていた……なんて経験したことあるだろう?
蚊はマラリアなどを運び、人を死に至らしめることのできる存在だ。人を除けば人を殺す生き物第一位なのだからな。
だから私は虫よけスプレーを持って常に蚊に刺されないよう……聞いているかね?」
「聞いてますよ」
「うむ、それは良かった!
どこまで話したっけ……ああ、そうだ。
蚊に刺されないよう肌という肌に塗り込んで……」
 そしてまた先輩は水を得た魚のように饒舌に語り始める。
 今日はもうプロット考えるの無理だな。
 私はそう諦めて先輩の話に相槌を打つ係になった。

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