田んぼのあぜ道、鬱蒼とした森、何かが祀られている祠。
輝く月、煌めく星、木に覆われた山、目には見えないけど暗闇の中で確かに存在している何か。
朽ちた建物、侵食する植物、かつて文明があった場所、こちらを見ている視線。
……心の中の風景はまるでアニメやゲームの一枚絵のように鮮やかだ。
ただ、そこに生き物らしい生き物はいない。
でも何かはいる。何かはわからないけど、確かにいる。
だけどおそらく怖いものではない。まっくろく◯すけみたいなものだろうから。
もしかしたら違うかもしれないけど、私はそう思ってる。
青々と風に吹かれて揺れている一面の草原。
そこで麦わら帽子を被った少女が木の枝片手にてくてくと歩いていた。
だが急にひときわ強い風に吹かれて麦わら帽子が飛んでいく。
ポカンと口を開けた少女がふと弾けたように帽子を追いかける。
だけど風に乗った帽子はぐんぐんと空高く飛び、どこかへ消えてしまった。
少女は手を伸ばし悔しそうな顔をして草原へふて寝する。
夏草の香りに包まれ、いつしか少女は眠ってしまった。
少女の見る夢はどんなものだろう。
過去の夢か、現在の夢か、未来の夢か。
私には知る由もない。ただ、少女の顔は幸せそうだ。
ここで何があったかなど何も知らない無垢な顔。
今はまだ、それでいいのだろう。
うぅ……私のスマホどこいったんだろう……
さっきまでそこにあったのに。スマホがないと出かけられないよお……
どこに置いたんだろ……タイムマシンがあったら数分前に戻って自分に知らせるのに……
というか、こんだけ探しても見つからないなんて……
まさか、ソファの下に潜り込んでるとか!?
……ほぼ真っ暗で何も見えない。
仕方ない、スマホの灯りで……って、え?
……ここにあるじゃん……手に持ってるじゃん……
なんで今まで気づかなかったんだろう?
メガネをかけてるのにメガネを探す人の気持ちが意図せずちょっとわかってしまったぞ……
はあ……まあいいや。来月友達に会った時の話のタネにしようっと。
それがあるあるだったとしても、あるあるなりに少しは盛り上がるでしょ。
実は私には一度やってみたかった夢がある。
まず大きなタライを用意して、そこに水をなみなみと注ぐ。
次にトマト、きゅうり、おナスにスイカ、ついでにピーマンも投入。もちろん生のまま。
そこによく冷やすための氷も入れちゃえ〜。
よし、これで冷やし夏野菜タライの完成!
タライのすぐ側に折りたたみイスを設置して、そこに腰掛けつつ足をちゃぷんとつけると……
うぅ〜〜っ! 冷たくて気持ち〜〜〜っ!!
昔、テレビかアニメか何かでそれをやってるのを見てやりたい! って思ったことがあったんだよね〜。
こういうのって大人になっても楽しいもんなんだね。友達にオススメしちゃおーっと。
水を足でじゃぶじゃぶバチャンバチャンするの冷たくて楽しいってすぐわかってもらえるはずだもの。
あー、次の夏は波打ち際に素足のままで誰かとキャッキャうふふできたらいいなあ。
絶対楽しいよ。だってこれでもすごく楽しいもの!
……あら、水がぬるくなってきた。さすがにこの灼熱炎天下じゃ厳しいものがあるねえ。
もっともっと楽しみたいけど、このままここにいたらお空の住人になっちゃう。
意味は違うかもしれないけど、ひと夏の儚い夢を体験できたから良しとしましょうか。
辛い。苦しい。やめたい。終わりが見えない。もがいてももがいても遠のくばかりだ。
いつになれば終わる? どうすれば終わる?
答えなんてわからない。どこにあるのかもわからない。
俺はあの日に帰りたいだけなのに!
俺のしていることに意味はあるのか? ただ無意味に時間を浪費しているだけではないのか?
……もう、もう、疲れた。
いっそのこと全てを投げ出して大暴れしてめちゃくちゃにして今までやってきたことを全部壊してしまおうか。
「大丈夫。いつかきっとなんとかなる!」
落ち込んでいる俺にあいつはいつもの屈託のない笑顔でそう励ます。
……ああ、まただ。こいつは弱音なんか吐かない。本気でいつかきっとなんとかなると思っているのだろう。
だがそれはいつだ? いつなんとかなると言うんだ?
俺は今すぐにでも帰りたいんだ! お前なんかと違ってな!
……そうぶちまけたい衝動に駆られるが必死に我慢する。
まだ仲違いをしてはいけない。こいつの力がなければ過去に戻る錬金物は作れないのだから。
……だが、俺の中に巣食う焦りや怒りは確実に俺の心を蝕んでいった。
だから、ある日、ついに……手を汚してしまった。
錬金素材のためだった。あれがなければ錬金は完成しないとわかっていたから。
それを知ったあいつは……案の定と言うべきか、ショックを受けていた。
だが……もう後戻りなどできない。
作らなければ俺が次何をしでかすかわからない。そんな思いであいつは研究を続けているのだろう。
つくづくお人好しなやつだ。
……そう思ってしまう俺はもう、破滅への道を順調に歩いてしまっているのだろう。
あともう一歩だけ、もう一歩だけと思っていても自力で止められはしない。
……あいつならば、止めてくれただろうか。
いや……そもそもお互いのことをもっとよく知っていればこんなことにはならなかったのだろうか?
……たらればを考えても詮無いことだ。なのにどうしても考えてしまう……
ああ……誰か、助けてくれ。俺を止めてくれ……
§
ドラ◯エ10のver4に出てくる某キャラが元ネタ(?)です。
ドラ◯エ10の無料体験版の範囲がver4.4まで拡大されるので、よかったらぜひ遊んでみてください。