バスクララ

Open App
5/9/2025, 1:56:10 PM

白い画用紙と色とりどりのクレヨンが目の前にある。
『将来の夢を描いてみましょう』と先生が言う。
私は一瞬の迷いもなく画用紙に線を踊らせる。
そうして出来上がった幼い私の描く未来は極彩色で明るかった。
では今、白い画用紙と色とりどりのクレヨンが目の前にあったとして、大人の私は将来の夢を迷いなく描けるのだろうか。
それはきっと難しいし、あの極彩色も今となってはもう描けない。
だからせめて嘘であっても明るい色だけを選んで描こうか。
何のまとまりもない、そして何を描いているのかよくわからない絵になりそうだ。

5/8/2025, 2:10:30 PM

「よく、小さい子が一生懸命背伸びをして高いところにある物を取ろうと懸命になってるシーンとかに微笑ましさを感じる人も多いと思うけど……
あれ、本人的には大真面目で真剣だから微笑ましさを感じないでよね!」
 いつだったかそう言い放った友達は自分では隠しているつもりでも周りにバレバレなくらい身長にコンプレックスがある。
 背の順では常に一番前。体育で前にならえと言われた時腕を伸ばした経験もなし。
 だけどいつかクラスの誰よりもビッグになると闘志を燃やす中学二年生。
 ちなみにクラスで一番背の高い男子は190近く。言うまでもなくかなりデカい。
 まあそれはさておき、今日その友達が日直で黒板を消していた。
 高いところに書かれているのはジャンプで消していくけど、一番上に書かれているところには跳躍力が足りないみたいだった。
 それでも諦めずにぴょんぴょんしていたけど、やっぱり届いてなくて文字が見えていた。
 友達はそれを無言で見上げている……
 絶対内心「と、届かない……」って思ってるに違いないし、その時の絶望もよくわかる。
 だけど本当に申し訳ないけど、やっぱちょっと微笑ましい。
 顔に出したり言ったら怒られるんだろうけど!

5/7/2025, 12:48:24 PM

昼休みに大学の近くにある森を息抜きがてら散策してみる。
空を見上げるとイイ感じの木漏れ日が見えて、何かしらのインスピレーションが刺激されてる気がした。
でもそろそろ戻らなくちゃ。
授業が始まるからじゃない。この森にはタヌキやシカが出る。もしかしたらイノシシだっているかもしれない。だってちょっと歩けば山だし。
だから森の中にはロープが張り巡っている。
無闇矢鱈と人が奥に立ち入らないように。
野生動物がこちら側に来ないように。
さすがに森の入り口付近には滅多に姿を見せないらしいけど遭遇なんてしたくない。まだ死にたくないし。
……ここの木漏れ日好きなんだけど安全を考慮したら植物園の方がいいのかなあ。
でもお金払ってもこれ以上の木漏れ日が見られなかったら嫌だなあ。
そう考えながら大学へと戻るのだった。

5/6/2025, 12:27:01 PM

大好きなあのラブソング。
だけどその歌が好きだとを誰かに話したりしないし、カラオケで歌うこともない。
なぜならその歌は、親友の恋人を奪ってしまう歌だから。
私にそんな趣味があると思われるのは心外だし、何より私の状況と歌の状況がピタリと合致している今では余計な波風を立てたくはない。
あの二人は付き合いたてでとても幸せなのに、私のせいで二人の愛に亀裂を入れたくない。
例えあの歌が私の心情に寄り添っていても、私は二人の心を守らなきゃ。
……それが最善手だって、理解はしてる……

5/5/2025, 12:25:08 PM

家族アルバムを数年、いや十数年ぶりに開いてみる。
若い両親が二人で写ってる写真、300系の新幹線と一緒に写ってる笑顔の幼い兄、元気な祖父と祖母、ベビーカーに乗ってる赤ちゃんの自分……
いろんな場所へ旅行に行ったんだなぁとしみじみ思っていると、色あせた手紙を発見した。
こんなもの挟んだっけ? と首を傾げながら手紙を開くと、そこには拙い子供の字でこう書いてあった。
『おとうさん いつも おつかれさまです。
おとうさん だいすきです。
おとうさんの おち◯◯ん まっくろけです』
……最後の一文で吹き出した私は悪くないと思う。
というか、誰がこんなものを書いたんだ!?
笑いを堪えつつ母に訊くと、なんと私が幼稚園児の頃に書いたものだと言う。
で、その一文は母が半分悪ふざけで『こう書いたらお父さん喜ぶよ〜』と言ったら真に受けた私が大真面目に書いたらしい。
……おお母よ。子供になんてことを書かせるのだ。
だがそれよりも、なんでアルバムにこんなものを挟んであったんだろう……?
母は知らないと言うし、父も兄もわからないと首を横に振った。
……謎は深まるばかりである。

Next