マルゲリータことマルとはわたしのことだ。主から変わったにおいがしてから、主はあまり部屋からでなくなってしまった。
主はいつもさんぽに連れて行ってくれた。いつも笑顔で、最近は寂しそうな顔も見せていた。あの寂しそうな顔が原因なのか。わたしはてっきりコイワズライとやらだと思っていた。だが、わたしはなにも分かっていなかった。
あの香りがしてから早1年。主はあっという間にこの世を去った。それこそ、花が散るようにあっという間であった。
それこそ儚く、いうなれば呆気なく。主はわたしの日常から消えた。
それからの日々はあっという間に過ぎていった。主のいない日常は、つまらないの一言に尽きる。さんぽしてくれる人、おやつをくれる人、遊んでくれる人、その全てをわたしは失ってしまった。
わたしがもっと早くあのにおいに気づいていたら、何か変わっただろうか。所詮わたしは猫だ。伝えようがない。でも、自分の心の準備くらいはできた。主を忘れないよう、思いっきり甘えることもできたかもしれない。今は何もかもがもう遅いのだ。
主と最後に会ったのは1年前のひまわりの日。わたしも猫として成長した。でも自分が好みのオス猫をみたり、仔猫をもつ想像は全くしようと思わなかった。
今は、主の思い出に浸っていたい。立ち直るのは、もう少し先でも…主は悲しみませんか?
大好きな主。好きな物は、失ってから気づいても全てが遅かったのだ。
わたしはねこである。なまえはマルゲリータ。どうやらわたしの主がすきな食べ物らしい。(わたしはたべたことはない)
マルゲリータのマルちゃんとよばれている。マルちゃんと呼ぶならマルゲリータではなくマルでよかったのではないかとおもうが、主のこだわりがあるらしい。
きょうもきょうとて主のひざでのんびりしているわたしだが、主がたまにはさんぽに行こうというのでさんぽに行くことになった。よそのねこはさんぽに行くことはないらしい。わたしには考えられない。
主のじゅんびができた頃をみはからって、足にすりよってみる。主はこのしぐさに弱い。一撃必殺、ようするにいちころである。なんかよく分からない巻き物をからだにつけて(これがきゅうくつ)、主がリードをしっかりともってから玄関を開ける(べつに逃げたりしないのに)。
今日の天気は晴れだが、ところどころくもっている。快晴というより、晴れ。わたしはこのくらいの天気がすきだ。
右をみて、左をみて、いざ出発しようと思っていたら隣の家の黄色いもふもふで大きな花を見つけた。近づいてよくみてみたいのでにゃーと可愛く鳴いて、わたしに着いてくるように主をゆうどう(チョロい)。近くで見ることができた。
とても大きい。わたしの顔よりもっと大きい。真ん中は茶色くもふもふしている。花びらは黄色くたくさんある。とても綺麗だ。黄色と茶色の組み合わせもとても綺麗である。
ふんふんと堪能していると、主がこれは「ひまわり」という花だと教えてくれた。あったかくなってくると咲く花だそうだ。咲き終わるとハムスターとやらのご飯がとれるらしい。味は渋いそうだ。
楽しそうだが、寂しげな顔をしてひまわりをみつめる主。
そういえば最近主からかわったにおいがする。香水でも変えたのだろうか。でも主は香水はつけないタイプだから、恋人でも出来たのか?にゃふふ…ニヤリと笑うわたしを、主は切なくみつめる。
この時は、死のにおいなんて知る由もなかった。