「美味しいなこれ。」
彼は口いっぱいにみかんを頬張りながら言った。
「やっぱ高いの買って良かったな。甘さが違う。」
それから評論家のように語り出した。
「そうだな。明日も買いに行こうか。」
彼のいるこたつに向かい、彼と肩を並べてこたつに入る。
「うわ、あったか、、」
じわじわとくる熱気が何ともたまらない。
みかんに目をやるともう半分ほど無くなっていた。
「ごめんなぁ、つい美味しくてよ。」
みかんを見ていた事がバレたのか、気を使ってなのか、彼はこっちを向いて謝った。
「そんなに美味しかったか。食べてみたかったな。」
ちょっと揶揄うように言ってみると、彼は明らかにオドオドとした。
「くっ!今から買いに行く!!!」
そう言って彼はこたつから出るが
「さっむ!!!」
キッチン辺りから直ぐに戻ってきた。
「おい、もう8時だろ。寒いに決まってる。」
「うっ、確かに、、。」
彼はまたこたつに入り直した。そこで一つ零す。
「今日は仕事も同窓会も断ってこっち来たんだよ。ちょっとくらい、、」
そこで言葉は止まった。ふと隣を見ると
彼は微笑みながらこちらに顔を向けていた。
「なにそれ。そこまでして俺に会いたかったの?」
その言葉に小さく頷く。
「嬉しい、、大好きだ。」
彼は優しく俺を抱きしめて呟いた。
#みかん
後半みかん全然関係ないですね、、、。
「ほら!こっちこっち!!」
彼は俺の腕を引いてキラキラとした街へと誘う。
2人で訪れた場所は冬のデートスポット、イルミネーションが輝く街だった。
「ちょっ、おい!」
彼の方が少し力が強いのか、俺か引っ張られる感じになってしまう。
溶け残る雪上を滑るように歩く。
「ほら、見て。」
彼が指さす方を見つめる。そこには月のあかりをもかき消すようにイルミネーションがきらきらと輝いていた。
「うわ、、やべぇなぁ。」
「だろ!!これ見せたかったんだよ!」
そう言って彼は俺と手を絡める。
「お前、最近忙しいじゃん。会えねぇのすげぇ辛かったんだぜ。だから、こうして会えるのめっちゃ嬉しいの。」
くる、と振り返って笑う彼はイルミネーションの明かりよりも輝いていた。
「、、、馬鹿。」
「なっ!?」
彼の肩に頭を預け、彼の大きな手を取って零す。
「俺だって出来ることなら毎日会いたいよ、、。」
そう言って彼の顔を覗く。彼は微笑んで
「何それ。誘ってんの?」
俺に顔を近づけた。
「じゃあ、後で、な?」
俺は静かにその言葉に頷いた。
#冬休み
「おまたせ、ほいこれ。」
彼から渡されたのはココア。少し冷ましたのか湯気が出ていた。
「ありがとう」
「いいって。俺が飲みたかっただけだし。寒いだろ?」
こういう少しの気遣いでもオレは胸が苦しくなる。
期待してしまう。彼にとっては何気ない出来事なのだろうが、こっちを思ってくれた行動だというのが嬉しく感じられる。
今日はクリスマス。どこもかしこもクリスマス色に染っている。このマンションのベランダから見下ろす街もクリスマスで染まっていた。
「綺麗だな、」
彼が街のイルミネーションを見ながら言う。遠いせいか少しぼやけて見える。
「明日行ってみるか?」
「いや、いいや。人多いだろ。」
確かに今日にちらと見た感じ、昼なのに人が大勢集まっていた。
「もう、クリスマスだなぁ、なんか欲しいなー。」
彼がこぼす。
「もう俺達もあげる側だもんな」
「うるさいバカ!!サンタさんは俺にもプレゼントくれるよ!!」
「お前今年で34なったんだろ、、諦めろよ、、」
彼は頬をふくらませた。そんな所も好きなのだが。
「じゃあ、」
ふわと冷たいものが頬に当たった。
「お前が欲しい。ダメか?」
「は」
彼はオレの頬に片手を添えた。
「なぁ」
本当に此奴のこういう所が気に入らない。
「、、、好きにしろ」
彼は少し微笑んで俺とココアで濡れた唇を重ねた。
#イブの夜