「好きだなんて」
彼はそう言って僕を見つめる。たった数十秒。
その言葉の先には何も紡がれなかった。
別にその先を期待していたわけじゃないが、
少々残念というか、なんというか。
彼は照れくさそうに僕から目を逸らし始めた。
照れてるな、そう思うには彼の目は泳ぎすぎだった。
僕は彼の赤くなった頬を包み込み、
「好きだ」
そう言ってやった。
彼は顔を真っ赤にした。そのタイミングを狙い
「なんて、言ったらどうする?」
ここからは君の番だよ。
#I LOVE…
「ありがとう」
浮ついただけの軽い言葉、なんて思ってた。
相変わらず酷い性格をしている。どうしてマイナスとしか捉えられないのだろうか。
素直になれない。自分の気持ちを伝えられない。
恥ずかしいとかそれ以前の問題だった。
「バカみたいだ…」
素直に感謝くらいしていれば
彼は轢かれた。
俺を庇った。
ほんとに馬鹿みたいだった。
なんでこんな俺が生きて彼が死ななきゃならないんだ。
「ごめんなさい…ごめんなさい…」
ただ謝った。頭の中はそれでいっぱいだったから。
彼は息さえしているが、目を離したら死んでしまいそうで。
「謝るなよ、俺が悪いみたいじゃん」
何言っているんだ。
「守ってやったんだから、感謝くらいしてくれよ」
本当に馬鹿なのだと思う。自分が何をしたかも知らずに
「あー、しんどい…帰りてぇな…」
「ごめん……俺が…」
「だからもういいって!辞めろ!」
「先逝ってごめんな」
最後に謝ったのは彼だった。
やっぱり俺が悪かったんだ。
たまに自己暗示に陥る。
彼の顔を思い浮かべる。
自分がどんどん嫌になる。
何も言えていなかった。そういう状況だったとかじゃなくて、ただ、紡ぐ言葉すら出てこなくて。
「ありがとうとか…感謝とか…」
よく分かんねぇよ。
今はまだ、彼に会えないから、会えたその時は
人生で最後の感謝を伝えたいなんて。
#タイトル忘れましたごめんなさい
一つ、また一つと命は枯れ、
一つ、また一つと命は生まれる。
今、俺の目の前に居る彼は紡がれた命の一つ。
そして俺も紡がれた命の一つ。
その二つは、どこか似ていて、でも何もかもが違う。
俺たちは命を紡げない。
解ってた。辛かった。
彼は笑ってくれただけだった。
知らないフリをしたかった。
こんな俺が縋りついている彼が不憫で仕方ない。
分かっているつもりなのに。
「何泣いてるの、」
「何でもない…」
「なら泣かないでよ。」
彼は俺の手を取り応えた。
その手は暖かくて、大きくて。
「…本当は、女が、良い、とか思ってんの?」
「は?」
「子供も、結婚も、出来ないよ、こんな俺じゃ」
止まらない。いつの間にか目から涙も溢れていた。
「…ばかかよ、」
彼はふ、と笑うように言う。
「そんなおまえだから、愛したんだろ。」
彼が笑って唇を落とす。
それだけで幸せで。
俺の命の道はここで終わる。でも
どこか、幸せなような。このままでいたい。
#小さな命
「いつか居なくなっちゃうんだよね」
そうだ。彼も俺も、いつか消えてなくなる。
「そんな悲しいこと言うなよ。俺の心の中でお前はずっと生き続けてるから」
柄にもなく馬鹿なことを言う。
彼はいつもの顔を崩さず
「でもいつか忘れるでしょ。」
と呟く。コイツは何処までマイナス思考なんだ。
「俺のことが信じられないのかよ!」
軽く突っ込んだつもりだったが、彼は大きな目から少しずつ涙を零していた。
「忘れないで、、ずっと隣で笑ってて、、」
縋るように泣いてくる。彼が何かを抱え込む姿は幾度も見てきたが、泣くほどでは無かった。
ただ、それと同時に俺は彼の特別になれたような気がして、少し嬉しいような、そんな感じだった。
「馬鹿だな。ずっと一緒だよ」
彼を抱きしめ、頭に手を置く。
「お前もずっと隣で俺を笑わせてくれよ」
彼が嗚咽を漏らしながら泣く。
「何歳だよ馬鹿。心配症だなぁ」
はは、と笑ってみせる。
彼と俺、どっちが先に死ぬかなんて俺たちには決められない。神様が気に入った方を遺してく。
そんな輪廻の中で俺たちは生きている。仕方の無いことなんだ。
いつか死ぬ、いつか居なくなる。
いつか、誰からも忘れられる。
それでも
「ずっと一緒だよ」
そう思えるのは、君だから。
#1000年先も
浮上できてなくてすみません、、。スランプですごめんなさい許してください
「彼は居なくなったんだよ」
誰かからの強い言葉にハッとし、目を覚ます。
また、不吉な夢。人が死ぬ夢。
そろそろ悪い事でも起きそうだな、なんて軽く流しながら、朝の支度をする。
俺には彼がいる。だから、こんな事も些細な事なんだ。
ゆっくり寝息を立てる彼の頬を撫でる。
いつもはあんなに冷静で、キビキビしているのに、寝た途端に、少しした子供らしさを覗かせる。
「…….何してるの」
「うお、起きた。ごめんごめん」
頬を撫で続けていると彼は起きた。
そして頬を撫でていた俺の手をとって起きる。
「おはよ」
「ん、はよ」
「めっちゃ変な夢見ちゃったんだよね」
「え?偶然だな。俺も」
「え嘘、まじ?人が死んじゃう夢なんだけど」
「うお、一致すご。怖いよな」
「ほんと、まぁ信じてないけど。」
ほんとに些細な会話だし、馬鹿みたいな話だと思ったんだよ。
「は?」
彼が車に跳ねられた。
「は?え?なんで?え?」
まだ生死をさまよっているらしいが、生きる確率は低いらしい。
こんな言葉が脳裏をよぎる。
「彼は居なくなったんだよ」
そんな事ないよな
まだ、頭が働かない、動かない、動けない。
「死んだんだ。」
俺の夢が些細なことなんかじゃなくなった。
「まぁ、信じてないけど」
静かに流した涙は重力に逆らわず、カーペットに染み込む。
「俺も死んだら、お前の夢も」
人が死んじゃう、そんな夢。
#こんな夢を見た