空鈴 ss

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「ありがとう」
浮ついただけの軽い言葉、なんて思ってた。
相変わらず酷い性格をしている。どうしてマイナスとしか捉えられないのだろうか。
素直になれない。自分の気持ちを伝えられない。
恥ずかしいとかそれ以前の問題だった。
「バカみたいだ…」
素直に感謝くらいしていれば

彼は轢かれた。
俺を庇った。
ほんとに馬鹿みたいだった。
なんでこんな俺が生きて彼が死ななきゃならないんだ。
「ごめんなさい…ごめんなさい…」
ただ謝った。頭の中はそれでいっぱいだったから。
彼は息さえしているが、目を離したら死んでしまいそうで。
「謝るなよ、俺が悪いみたいじゃん」
何言っているんだ。
「守ってやったんだから、感謝くらいしてくれよ」
本当に馬鹿なのだと思う。自分が何をしたかも知らずに
「あー、しんどい…帰りてぇな…」
「ごめん……俺が…」
「だからもういいって!辞めろ!」

「先逝ってごめんな」
最後に謝ったのは彼だった。
やっぱり俺が悪かったんだ。

たまに自己暗示に陥る。
彼の顔を思い浮かべる。
自分がどんどん嫌になる。
何も言えていなかった。そういう状況だったとかじゃなくて、ただ、紡ぐ言葉すら出てこなくて。
「ありがとうとか…感謝とか…」
よく分かんねぇよ。

今はまだ、彼に会えないから、会えたその時は
人生で最後の感謝を伝えたいなんて。

#タイトル忘れましたごめんなさい

5/4/2023, 1:55:41 AM