踏青

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3/26/2026, 6:55:43 PM

下らぬ話1

 俺自身のことでも、時には話そうか。まぁなんだ、最近は泣いてばかりだよ。一週間ぐらい。なぜって、そりゃ漠然と悲しくなるんだよ。…あるいは​─────機会があればまた話すよ。よく分からないこともあるもんさ、何の理由もなく生きてるのと同じようにね。
 俺は、時に自分が怖くなるんだよ。いや、もっと言えば、俺が〈俺〉でない感じがして。まぁなんだ、今日だって鏡をじっと観ている時間があった。目の前に立ってる、この男の顔。よく観てみると、どうやら俺じゃないらしい。はは、笑ってくれるな。何せ、俺が俺である理由はないんだ。よく考えてもみてくれ。高名な日本の哲学者である永井均が云うには、人は皆「独在」であり、その唯一の存在が〈私〉なるものなんだと。そして、興味深いのは、この世界にはザッと80億人は人間がいるんだ。それなのに、俺たちは交じり合う事はなく、つまり唯一の存在として平行のまま、暮らしてるんだぜ。ゆえに、我々はみな存在論的に孤独であり、自由なんだ。この〈私〉を誰からも完全に理解されない限りはね。
 ああ、話がいささか逸れたね。…まぁつまりは、俺が〈俺〉でないってのは、ようはこの肉体と〈俺〉ってのは、まぁなんつーか、存在が別なんだよ。何を言ってんだって話かもしれんが、言葉によって〈俺〉を示したとしても、言葉ってのは、結局は誰かに伝わるもんだろ?しかも、不完全な形で。ってなるとさ、じゃあ〈俺〉を完全に示せる原理は?つまり、言語という媒体よりも優れた、上位の原理は他にあるのか?って話になるじゃん。それがさ、ないんだよ。現時点ではね。じゃあなんだ、俺が〈俺〉であるという事実だけが残るわけだ。ならば、鏡に"映る男"は〈俺〉を映しているものなのか?結局は、鏡という媒介(Vermittlung)を用いて、"身体"を映しているに過ぎないだろ?じゃあ、これは〈俺〉なのかよ?分かんないだろ?ゆえに、俺が不確かな存在に見えてくるのさ。まぁ分かんなくたっていい。言葉ってのは限度があるんだ。俺の言いたいことは、頭で理解するんじゃなくて、心で感じてくれ。分かんないならそれでいいさ。

X @Dasein_7539

3/22/2026, 3:48:08 PM

近きより遠き
登るより沈む
在るよりも在らぬ
観られぬより観る
選ぶ恋より選ばぬ愛
語る品より語らぬ品
幸福の時より喪失の時
やらぬ益よりやる無益
割れぬ物より割れる物
見せつける色より滲み出る艶
透きとおる青より踏まれた青
確かなものより不確かなもの

3/10/2026, 7:50:10 PM

奇怪な文章1

「Bでしょうね。ただ分からないことが一つあります。私は一本の道を辿ってきたはずです。そして、それを真っ直ぐに進んで行った。なのに、来た道が分からなくなった。私は道を間違えたんですか?間違えたならば、今の私はどこにいるのでしょう?はは、初めから何処にもいなかったんじゃないですか、私って。ははは。道を間違えたんじゃなくて、始めから道なんてなかっただけなんじゃないんですかね。浜辺を歩いていると、波が押し寄せてきて、波打ってまた元の場所へ戻っていくじゃないですか。でも、浜辺に残った私の足跡は消えていくんですよ。面白いですよね!!私が居た痕跡がなくなるんですよ!最初から何もなかったように!!これを不条理って言うんじゃないですか!ははは。私が生まれてきたことには理由がないのに、その理由を作ろうとすれば消えていくんですよ!!跡形もなくね!面白いですよね!!ははは。」

3/7/2026, 11:01:35 AM

 もし、涙が人目のつかない所で流されるものであるなら、人が泣いているポートレートは、"人に見せるため"の意図的な行為なのではないか。
 もし、泣いている人を美しいと思うならば、それは仮面を外しているからであり、仮面を被っていても、それを美しいと感じるのか。
 もし、その涙が偽りであるならば、その欺きに騙され、その涙を受容してあげよう。
 悲しさは常に真であるとは言えない。しかし、その理性を超越した感覚こそ、実存に触れえることが可能ではないか。触れるとはそういうものではないのか。

3/3/2026, 2:42:26 PM

 もし、私が小説を書くとするならば、おそらくその小説は、全体を見渡したような、始めから終わりが分かっているようなものではなく、さながら何も分からずに、暗闇の中をただひたすらに進むだけのものとなるだろう。あるいは、それが小説だと思っていたものが、それが単なる現実であり、人生そのものであるのかもしれない。

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