私の1番の理解者であり、1番の味方だったあなた。
いつだって冷静で理論的で、だから人の感情には鈍感で。
でも、不器用ながら誰より私に優しい人だった。
私はあなたを、好きになりきれなかったの。
あの人を捨てることができるほどの深い愛を持てなかった。
あなたの側で生きるのは心地が良くて楽しくて、
でも安心の奥底にあった迷いをいつも消せなかった。
心のどこかであなたに妥協し続けて、
それは時々不満として降り積もっていった。
あなたと描いた幸せは、私の小さな妥協の上にあった。
私の1番の理想であり、1番輝いていた君。
素っ気なくて自分本位で、だからどこまでもずるくなれて。
でも、今も昔も誰より私を魅了した人だった。
私は君を、嫌いになれなかったの。
他の誰かを不幸にすると分かっていても止められなかった。
君の存在ほど私の心を揺さぶるものはなくて、
何をされても恨むことすらできなかった。
私を泣かすのはいつも君だったのに、
私に前を向かせるのも君だったから。
多才で見た目のいい君は、いつだって私の自慢だった。
君と描いた幸せは、私の小さな欲と我慢の上にあった。
人が持つ最も強くて、最も愚かな感情。
誰かの不幸の上に成り立つ、決して誰も抗えない欲。
私を最低な人間にしたのも、
あなたを泣かせ傷つけたのも、
君を弱くしずるくするのも、
愛なんていう愚かな幻のせい。
___好きになれない、嫌いになれない
夜が明けた。
あなたのいない朝がやってきた。
私はあなたより長年恋焦がれてきた、
心の片隅に居座り続けたあの人からの誘いを優先した。
私のことを誰より理解して好きでいてくれるあなたと、
私を何度も捨てた私の世界の全てだったあの人。
汚い欲だった、愚かな期待だった。
そんなもののために、私はあなたを裏切ってしまった。
私はまた、大切なものを失った。
"えらいね"って"すごいよ"って。
そうやってあなただけはいつも、
私の無謀な夢も先の見えない未来も応援してくれたのに。
どん底にいる私に手を差し伸べて、
望む選択肢も与えてくれて。
そうやって淡白な態度の裏であなたはいつだって、
私を肯定して味方でいてくれたのに。
私の不幸に心を痛めて私のために泣いてくれた人を、
一緒に幸せになろうと誓った人を、
こんなにも簡単に傷つけてしまえた。
好きだったのに。
あなたとの幸せな未来なら簡単に想像できるくらい、
何年話していてもそばにいたいと思えるくらい、
本当に好きだったの。
あなたからの当たり前の愛、当たり前にやってくる明日。
一緒に生きていく未来も当然、やってくるんだと思ってた。
ごめんね、私は泣くべきじゃないね。
弱く愚かでずるい私は、
こうやって失うことでしか気づけなかった。
夜が明けた。
生きていくための希望を失ったのだと、後悔した。
___夜が明けた
好きだよ。
君の一言でこんなにも心が揺れてしまうほど。
君の存在一つで
好きなあの人の思いすら霞んでしまうぐらいに。
今でも、君が手放せないの。
誰にも心変わりすることなどないと確信が持てた。
一生愛し通せる自信があった。
いつだって私の自慢だったのは、君だけだった。
やっぱり私にはできないの。
君を捨てて、他の誰かを一途に愛することだけは。
あの時から、君は私の世界の全てだったから。
___好きだよ
君は私を、どれだけ泣かせれば気が済むの?
君の存在ひとつでどれだけの涙が流れてきたか知ってる?
自分がどれほどの傷をつけてきたのか、
何ひとつ覚えてもいないでしょう。
私の前に何食わぬ顔で現れて、
よくもそんな平然としていられるわね。
不幸になるべきなのは君なのに。
嫌われて然るべきなのは、君の方なのに。
ずるいのよ。
見た目だけで全てが許されて、
その溢れ出る自信で何もかも手にするなんて。
下を向いて生きるべき君が私以外にもてはやされるのは、
本当に気に食わない。
捨てられて、ひとりぼっちになって、
私に泣きついてくるような情けない君でいればいい。
こんな最低な君を好きでいられるのは、
君のその嘘が耐えられるのは、
私だけなんだよ。
___涙
誰もが本当は知っている。
目の前にあるありふれた日常が、小さな幸せであること。
こうして生きていられることが、何より幸福であること。
でもね、人生はそんな簡単じゃない。
だって、人の欲には終わりなどないのだから。
手に入らないものが魅力的なのは常。
比較の世界で生きる私達は、
誰かの不幸なしでは幸せになれない。
平凡であることが最も難しいのは、
私達が羨む先がいつも"平凡な人生"ではないから。
小さな幸せで満足できる人など、ほとんどいないのだから。
可哀想なほど愚かな私達は、
全てを捨ててまで身の丈に合わない大きなものを望む。
この世で最も不幸なことは、
自分が手にしている幸せの質を測り、その数を数えること。
小さな幸せに、感謝すらできないこと。
___小さな幸せ