君の背中を追って、何度も春を見送った。
追いつけないことはとっくに分かっていたのに、
それでも私は君が振り向く奇跡を信じていた。
名前を呼ばれなくなっても、
声が冷たくなっても、
優しさの残骸みたいな通話にしがみついていた。
君の言葉に一喜一憂して、
君の沈黙に何度も自分の価値を測った。
“好き”って、どうしてこんなに残酷なんだろう。
選ばれなかった私は、何を信じて、何を望めばよかったの?
でも、もう戻れないから。
君が私の理想でいてくれなくてもいい。
あの儚い美しさを失って、
身体だけ男らしくなってしまった君でもいい。
だって私はもう、君がいなければ生きられないような
弱くて愚かな女の子じゃない。
君のために変わった。
君に恋して、君を信じて、その分だけ深く傷ついた。
君につけられた傷が、私を強くしたんだよ。
だから今だけは、言わせてほしい。
――君の背中を追って、私はここまで来た。
でももうこれからは、自分の足で前を向いて歩く。
君の背中じゃなく、
私の未来を見るために。
___君の背中を追って
幸せな人は言う。
"勝ち負けなんて気にしても意味ないじゃない"
恵まれて生きてきた人は言う。
"勝ち負けなんて重要じゃないでしょ"
勝敗にこだわるのは愚かなことで、
優劣を決めながら生きるのは虚しいことだと。
でも、私はそれでもその人たちに言いたい。
"勝ち負けがこの世の全て"なのだと。
勝者だから富を得て、
勝者だから幸せになれる。
平等は当たり前なんかじゃない。
それを知らないのは、
いつだって明るい世界しか見ていない勝者だけ。
___勝ち負けなんて
君のいない明日など来なければいいと、何度も願った。
君を想って泣いた夜を何度もこえて、
君のいた日々に苦しんだいくつもの朝を迎えて、
気づけばそうやってしか君を思い出せなくなった。
私と違って自信に溢れてて、でも私と同じように愚かで。
弱い、ゆえに私達は卑怯でずるかった。
自分達だけが楽に自由に息ができる場所を好んで、
幾度となく他人を振り回し裏切り背を向けてきた。
芯の部分が似たもの同士、
君の気持ちは痛いほど理解できた。
だからどうしても、嫌いにならなきゃいけなかった。
どうしても、捨てなきゃいけなかった。
どうしたって、側にはいられなかった。
___どうしても、
まって、無視しないで。
まって、いや、捨てないで。
ねぇまって、もう置いていかないで。
呆れるくらい何度も呼び止めた。
おかしくなるくらいその名前を呼んだ。
一度も振り返らない背中に手を伸ばして、
あなたの足跡だけを泣きながら追いかけて、
その冷たい言葉と視線に何度も心を八つ裂きにされた。
そこまで堕ちてもあなただけは失いたくなかった
それなのに、
戻ってきたあなたは声と顔が同じなだけの別人。
あなただけはあの頃のまま、変わってほしくなかった。
ねぇ、私が好きなのは今のあなたじゃないわ。
___まって
ただ君だけを想って、君だけのために生きて、
だから私が望んだ未来には君がいなきゃダメだった。
どれほど哀れで愚かな恋でも、
それが私の世界の全てだったから。
君のためならどんな嘘もつける。
君を手に入れられるならどこまでも最低になれる。
誰かを裏切って傷つけてでも、君だけは失いたくないの。
君だけは、私の理想のままでいてよ。
___ただ君だけ