君のいない明日など来なければいいと、何度も願った。
君を想って泣いた夜を何度もこえて、
君のいた日々に苦しんだいくつもの朝を迎えて、
気づけばそうやってしか君を思い出せなくなった。
私と違って自信に溢れてて、でも私と同じように愚かで。
弱い、ゆえに私達は卑怯でずるかった。
自分達だけが楽に自由に息ができる場所を好んで、
幾度となく他人を振り回し裏切り背を向けてきた。
芯の部分が似たもの同士、
君の気持ちは痛いほど理解できた。
だからどうしても、嫌いにならなきゃいけなかった。
どうしても、捨てなきゃいけなかった。
どうしたって、側にはいられなかった。
___どうしても、
まって、無視しないで。
まって、いや、捨てないで。
ねぇまって、もう置いていかないで。
呆れるくらい何度も呼び止めた。
おかしくなるくらいその名前を呼んだ。
一度も振り返らない背中に手を伸ばして、
あなたの足跡だけを泣きながら追いかけて、
その冷たい言葉と視線に何度も心を八つ裂きにされた。
そこまで堕ちてもあなただけは失いたくなかった
それなのに、
戻ってきたあなたは声と顔が同じなだけの別人。
あなただけはあの頃のまま、変わってほしくなかった。
ねぇ、私が好きだったのはあなたじゃないわ。
___まって
ただ君だけを想って、君だけのために生きて、
だから私が望んだ未来には君がいなきゃダメだった。
どれほど哀れで愚かな恋でも、
それが私の世界の全てだったから。
君のためならどんな嘘もつける。
君を手に入れられるならどこまでも最低になれる。
誰かを裏切って傷つけてでも、君だけは失いたくないの。
君だけは、私の理想のままでいてよ。
___ただ君だけ
私の1番の理解者であり、1番の味方だったあなた。
いつだって冷静で理論的で、だから人の感情には鈍感で。
でも、不器用ながら誰より私に優しい人だった。
私はあなたを、好きになりきれなかったの。
あの人を捨てることができるほどの深い愛を持てなかった。
あなたの側で生きるのは心地が良くて楽しくて、
でも安心の奥底にあった迷いをいつも消せなかった。
心のどこかであなたに妥協し続けて、
それは時々不満として降り積もっていった。
あなたと描いた幸せは、私の小さな妥協の上にあった。
私の1番の理想であり、1番輝いていた君。
素っ気なくて自分本位で、だからどこまでもずるくなれて。
でも、今も昔も誰より私を魅了した人だった。
私は君を、嫌いになれなかったの。
他の誰かを不幸にすると分かっていても止められなかった。
君の存在ほど私の心を揺さぶるものはなくて、
何をされても恨むことすらできなかった。
私を泣かすのはいつも君だったのに、
私に前を向かせるのも君だったから。
多才で見た目のいい君は、いつだって私の自慢だった。
君と描いた幸せは、私の小さな欲と我慢の上にあった。
人が持つ最も強くて、最も愚かな感情。
誰かの不幸の上に成り立つ、決して誰も抗えない欲。
私を最低な人間にしたのも、
あなたを泣かせ傷つけたのも、
君を弱くしずるくするのも、
愛なんていう愚かな幻のせい。
___好きになれない、嫌いになれない
夜が明けた。
あなたのいない朝がやってきた。
私はあなたより長年恋焦がれてきた、
心の片隅に居座り続けたあの人からの誘いを優先した。
私のことを誰より理解して好きでいてくれるあなたと、
私を何度も捨てた私の世界の全てだったあの人。
汚い欲だった、愚かな期待だった。
そんなもののために、私はあなたを裏切ってしまった。
私はまた、大切なものを失った。
"えらいね"って"すごいよ"って。
そうやってあなただけはいつも、
私の無謀な夢も先の見えない未来も応援してくれたのに。
どん底にいる私に手を差し伸べて、
望む選択肢も与えてくれて。
そうやって淡白な態度の裏であなたはいつだって、
私を肯定して味方でいてくれたのに。
私の不幸に心を痛めて私のために泣いてくれた人を、
一緒に幸せになろうと誓った人を、
こんなにも簡単に傷つけてしまえた。
好きだったのに。
あなたとの幸せな未来なら簡単に想像できるくらい、
何年話していてもそばにいたいと思えるくらい、
本当に好きだったの。
あなたからの当たり前の愛、当たり前にやってくる明日。
一緒に生きていく未来も当然、やってくるんだと思ってた。
ごめんね、私は泣くべきじゃないね。
弱く愚かでずるい私は、
こうやって失うことでしか気づけなかった。
夜が明けた。
生きていくための希望を失ったのだと、後悔した。
___夜が明けた