どこか 遠くへ出掛けましょう。
用事が無くたって構わない。
それは、まだ見ぬ何かに出会うため。
たとえば
夕日を溶かす海のある まち
登れば空を掴める山のある まち
憧れのあの人が生まれ、育った まち
迷子の私を案内してくれる人のいる まち
私はそんな場所に行きたいのです。
私の探す、どこかに出会うため
どこか 遠くへ出掛けましょう。
―遠くの街へ
君は今、誰を思って眠るのだろう。
僕はこんなにも、君を思っているのに
こんなにも君ばかり見つめてしまうのに
君から見た僕は透明なのだ。
透けた僕越しに君は、何か美しいものを見る。
君の見る世界は、
僕の知っている世界とは違うらしい。
僕には君のことが分からない時がある。
君は1人ですっ転んで、ふふ、と笑う。
君は舌が痛いだけで、死に怯えたりする。
僕には君に見えているものや、
考えていることなんて、
百年かけても解き明かせない。
僕にとっても、君は透明だ。
そこにいるのに、僕には捉えられない。
今にも君は、この世界から抜け出して、
違う次元に行ってしまうのではないか。
僕はもっと、君を知りたい。
そうして僕は今、君を思って眠りにつく。
―君は今
現実の空は、情景なんてものではない。
空はちっとも私の心を思ってはくれない。
確かに、灰色の空は心を暗くするし
青色の空は心を明るくするかもしれない。
でも、だからと言って
心が暗い時に空が曇り、
心が明るい時には空が晴れる
なんてことはない。
いつだって空は勝手なのだ。
人の心は簡単に、空の勝手に振り回される。
現代文では、暗い空はネガティブな心情を表す
と習うかもしれないが、実際はそうではない。
不安な時、空は共に曇ってはくれない。
悲しい時、空は共に泣いてはくれない。
ネガティブな時ほど、空というものは
見ていて苦しくなるほど、美しい。
陰鬱な私と晴れ渡る空。
何よりも皮肉な対比。
何よりも酷い裏切り。
いつだって空は勝手なのだ。
―物憂げな空
来月、この学校を卒業したら、
私が貴方に会うことは、きっとないでしょう。
私はこの思いを、貴方に打ち明けることなく、
おばあちゃんになって、貴方を忘れるまで
ずっとずっと、胸の中にしまい込むのです。
貴方との時間は、麻薬。
わざわざ貴方が私につけた、特別な呼び方。
寝落ちした翌朝、「おはよう」とチャットが来たこと。
不安な時、パニックになって掛けた電話で
優しくなだめてくれたこと。
私、全部覚えてる。
その瞬間のときめきを。
私達は恋人じゃないし、お互い触れたこともない。
だけど、友だちでもない。
言葉を持たない関係が、私達には好都合だった。
私達は歪な者同士。
恋に少し似ているが、醜い感情を持ち寄って
どちらが先にはみ出すか、そんなゲームをしていた。
それは刺激的で、中毒性を持つ遊び。
私は負けたの。そして多分、貴方も負け。
だから一緒にゲームをやめた。
その後クラスも変わって疎遠になった。
世間は恋を、美しいものだと言うけど、
私にとっての恋は、貴方との時間。
私の中の「恋」という言葉を、貴方にあげる。
―Love you
君は、文字通り太陽のよう。
私の名前の由来は太陽なのだと、
君は誇らしげに語って見せた。
だが、太陽が明るく輝くほど、
周りを照らす一方で、
その後ろには濃い影が出来るものだ。
君の前には大きな雲が立ちはだかった。
君は太陽であるくせして、
あんまり晴れという天気を知らない。
そして、君は言う。
自ずから名が体を表すということはない。
私は体で名を表せるようになりたい、と。
私は太陽を名乗れるほど、
明るい人間ではないのだけれど、
この名前が私に力を与えるのだ、と。
君は軌道にたくさんの隕石があろうと、
きっと、もろともせずに突き進む。
ぶつかる隕石が多ければ多いほど、
君は燃料に変えて、更に燃え、輝く。
君が背負った黒点こそ、君の、太陽にも勝る美点。
暗闇の中にあっても、君は光を探すことなく
自ら輝こうとする野心を持ち続けた。
名乗りなさい、自分が太陽であると。
君に今、雲間が訪れる。
―太陽のような