秩序も感性もない世界を壊して貴方の透明な水に垂らした私の愛してるから広がる波紋が存在する世界へ。
-愛と平和(ex:感性と秩序)
過ぎ去った日々が目の前にあった。
これはユメかゲンジツか。わからないから目の前のブルーベリーを摘んだ。しかし、さて、どうだ。と思ったが、そのブルーベリーの味はぼやけていてよくわからなかった。
もう一粒、と舌の上に置いて犬歯を通すが、やっぱりわからなかった。犬のように鼻が良ければわかるのかな。
そうして、最後だ、とブルーベリーを掴んだ。そして、犬歯を越えた先にあったものは、吹き出して笑う煌めいた声と、一等に愛している彼女の眩い笑顔であった。
「レモン食べた時みたいな顔になってる。目うるうるしてるよ」
ああ。きっとこの三つ目のブルーベリーは彼女が与えてくれたものに違いない。彼女のことならなんでもわかると思うのだ。やっぱり彼女が与えてくれた過ぎ去った日々のユメなのだろう。
お金より大事なものなどあるのだろうかと考えてみると、それは命だなと思った。幾ら金を持て余していても死んでしまえば使い道など大してあるわけでもない。身内や大切な人に残せる財産にはなるが、彼女にはそれはなかった。はて、そうなると答えはやはり命一択になるだろう。そして、その命を輝かせるものは目の前で眠るこの男ただ一人なので、この答案の途中式は以上とする。
列車に乗って、微睡みの中で車窓に目をやると見える何気ない景色を貴方と共に迎えること。それを見て他愛のない会話をぽつりぽつりとして、駅弁を食べて、寝たり起きたり、目的地までのひとときを普段より高揚した気持ちでゆるやかに過ごすこと。このひとときは私たちの物語における目的地でこれからの出発点であった。今はただ、いつまでもこの日々が続くことを願ってやまないのだ。
蒸した空気に現を抜かして禁断の果実に歯を通す。思考を避け、密室の中をより暗闇へと逃げた。
-現実逃避