No name いろんなふたりやひとりの、概念や小噺

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過ぎ去った日々が目の前にあった。
これはユメかゲンジツか。わからないから目の前のブルーベリーを摘んだ。しかし、さて、どうだ。と思ったが、そのブルーベリーの味はぼやけていてよくわからなかった。
もう一粒、と舌の上に置いて犬歯を通すが、やっぱりわからなかった。犬のように鼻が良ければわかるのかな。
そうして、最後だ、とブルーベリーを掴んだ。そして、犬歯を越えた先にあったものは、吹き出して笑う煌めいた声と、一等に愛している彼女の眩い笑顔であった。
「レモン食べた時みたいな顔になってる。目うるうるしてるよ」

ああ。きっとこの三つ目のブルーベリーは彼女が与えてくれたものに違いない。彼女のことならなんでもわかると思うのだ。やっぱり彼女が与えてくれた過ぎ去った日々のユメなのだろう。

3/9/2024, 6:37:15 PM