脳裏
いつも貴方といたい、いつも貴方を見つめていたい。
貴方に私だけを見ていてほしい、他の人を見ないでほしい。
とか、毎日考えていたりして。
そのたびに、
「愛が重すぎる、面倒くさい。」
なんて、貴方の言葉が脳裏をよぎる。
でも、それくらい貴方の事が大好きなの。
私はカフェでコーヒーを片手に、昔からの友人である千紗の相談に乗っていた。
彼女はいつもこうだ、愛が重い。
でも、私はそれが間違っているとは思わない。
愛の重い彼女が好きだから、悩んで私に縋る彼女が愛おしいから。
だからその欲望を彼女が我慢しないように、優しい口調で彼女に共感する。
やっぱり、愛の重さが違うって辛いよね。
愛が伝わらないのって悲しいよね。
「愛の重さが違って辛いのなら、いっその事押し潰しちゃえば?」
それで、それがトラウマになって、私しか愛せなくなれば良いのにな。
とか、毎日考えていたりして。
でも、それくらいあなたの事を愛しているの。
意味がないこと
ガードの固い人ほど、一度中に入らせちゃったら深いとこまで侵入させちゃうんだよね。
いつかは俺に堕ちるんだから、そんな建前の拒絶なんて意味ないのに。
一筋の光
私を途方のない暗闇の中に突き落としたのは貴方。
でも、その暗闇の中で一筋の光になってくれているのも貴方。
哀愁を誘う
お婆ちゃんの部屋の隅には、埃を被った木製のピアノが置いてある。
窓から入る太陽の光によって小さく照らされているそれは、お婆ちゃんが昔私に譲ってくれた物だ。
私はピアノに近づき、そっと撫でた。
指には埃の塊が付き、キラキラと散っていく。
昔、お婆ちゃんの演奏を見たのをきっかけに始めたピアノ。
当時はとても楽しくて、毎日の様にここでピアノを弾いていた。
けれど、お婆ちゃんが亡くなってからは何となく弾く気にはなれなかった。
それを見た私の母は「せっかく良いピアノを譲ってもらったのに勿体無い。」と言った。
それからと言うもの、好きでやっていたピアノを、いつしか「やらなきゃ」という義務感でやっていた。
しかし、楽しいと思えないモノが続くはずもなく、私がピアノを弾く事は無くなっていった。
お婆ちゃんとの思い出が詰まったこのピアノ。
長年放置されていたピアノには美しさと共にどこか寂しさを感じた。
と同時に、これはこのまま残しておきたいな、と強く思った。
鏡の中の自分
自分の顔なんて、写真や鏡でしか見た事がない。
けれど、カメラアプリや鏡によって顔は変わるし結局どれが本当の私なのか、私には分からない。
その中でも確かに分かるのは、残念ながら私は「顔が良い」部類の人間ではないという事。
でも、最近はこの顔も嫌いではない。
ずっと片思いをしている彼が、二週間程前にこの顔を「かわいい」と言ったのだ。
ただのクラスメイトとしてのお世辞かもしれないけれど、私はこのたった一言がとても、とっても嬉しかった。
恋はまるで魔法だと言うけれど、本当にその通りなのかもしれない。
だって、好きな人からのたった一言だけで、鏡の中の自分が前よりずっと輝いて見えたから。
鏡を見ては悩んでいたあの日々がずっと過去のことの様にさえ感じる。
ああ、ほんとに。
時々上手くいくから人生はやめられない。