#君だけのメロディー
ママは、いつも私に子守唄を歌ってくれていたよね。
孤児院にいた私を、優しく包み込むように。
それがまるで、私にとっては話をしているようで。
それが心地よくて、私はすぐに眠ってしまったっけ。
でもね、ママ。今度は私がそうする側になったんだよ。
「ねむれ、ねむれ、母の胸に ねむれ、ねむれ、母の手に
こころよき うたの ひびきいとし児の ねむりをまもる
ねむれ、ねむれ、母の胸に ねむれ、ねむれ、母の手に」
たったこれだけの歌詞。誰でも歌える子守唄。
でも、不思議なんだよ、ママ。
ママが歌えば、なんだか絵本の読み聞かせみたい。
なんだか眠たくなって、ウトウトして…。
子供の頃のことなのに、こんなにちゃんと覚えているんだよ。
これから、私も子供にこの唄を歌うね。
誰かの、ママになるね。
#君と歩いた道
私は、歩いていた足を止めた。ここは、私が子供の時の通学路だった。
あやかちゃんと私は、「あやすみち」って言ってたんだよ。
あやかちゃんの「あや」と、私(かすみ)の「すみ」。それと「道」。
全部合体させて「あやすみち」。もっといい名前あっただろうにね。
まあでも、いい名前だと思ってるよ。二人きりの呼び方だし。
子供の頃って、なんか「内緒」っていうのを作りたくなるんだろうね。
いや、そんなことはどうでも良くて。私が話したいのは、そうじゃない。
あやかちゃんと私の、話。最後まで、聞いていってね。
「かすみちゃん。きょう、あそべる?」
「うん!あそぼう、あそぼう!わたしのいえであそぶ?」
「いいの?ありがとう!じゃあ、しゅくだいもっていくね。」
そんな、他愛のない話をしていたとき。
「かすみちゃん!あぶない!!」
あやかちゃんは私を突き飛ばし、道路から突っ込んできた車に轢かれた。
「あやか…ちゃん?」
あやかちゃんの頭から、赤い液体がドロドロでてくる。
それが血だと気づくには、幼い私には時間がかかった。
私は大声で叫んだ。何度も何度も、あやかちゃんの名前を呼んだ。
でも、このとき私は初めて人が冷たくなっていくのも感じた。
これが、私が話したかったこと。なんか、思い出したら泣けてきちゃった。
この君と歩いた道を、物語を、私は忘れないよ。君の分も、私が生きるよ。
大好きだよ。ありがとう。あやかちゃん。
#夢見る少女のように
私は夜の公園で1人、ベンチに座っていた。座りはじめて何時間経っただろうか。
大人が何してんだって思うかもしれないけど、本当に、何もすることがないんだ。
そのとき、私の前に、一人の少女が寄ってきた。こんな夜中にどうしたんだろう。
「どうしたの?お母さんは?迷子?」
少女は空を指差し一言、こう言った。
「お星さまになりたいの。」
不思議な子だと思った。その女の子の瞳は輝いていた。私の口は言った。
「じゃあ、お星さまになれるまで、一緒に暮らそうか。」
勝手に口が動いたのだ。すると女の子は、
「家に...住めるの?私が...?」
と言った。女の子の瞳は、より一層輝いて見えた。
私は、この子を守るために生まれたのだと、分かった。
私は、女の子のか弱い手を握り、歩き出した。
私も、夢見る少女のように、目を輝かせていた。
#さあ行こう
①さあ行こう。新たな世界へ。まだ見ぬ世界へ。
さあ行こう。新たな場所へ。まだ見ぬ場所へ。
さあ行こう。新たな地位へ。まだ見ぬ地位へ。
さあ行こう。新たな自分へ。まだ見ぬ自分へ。
②私は来週、修学旅行へ行く。ワクワクした気持ちと、雨が不安な気持ちがある。
だって、雨が降ったら、気分も下がるし濡れるし。
「もう、ええことないやん!」
私がそういったとき、友だちが言った。
「そう思うから、楽しくないねんで。」
きょとんとしている私を前に、友達は続ける。
「言霊ってしっとるやろ?それやで。ええことないって言ったらええことないねん。
ヘラヘラへこたれとってもええことないねん。天気?そんなん関係ないやろ!
雨でも晴れでも構わへん。楽しいと思うか思わんかやろ!雰囲気、暗ぁせんといて!」
私は、その言葉を聞いて、心のモヤが晴れた気がした。清々しい気持ちで、私は言った。
「うん、そうやな!雨でも晴れでも、楽しいと思ったら楽しいわな!」
私は心のなかで言った。
“さあ行こう!”
#約束だよ①
「約束だよ、お母さん。遊園地行こうね。」 息子が母親に約束を交わす。
「約束ね、〇〇ちゃん!ずっと友達だよ。」 子供が友達に約束を交わす。
「約束よ、あなた。いつも愛し合おうね。」 女性が恋人に約束を交わす。
でも、そんなこと本当の約束じゃないんだ。結局は、みんなこうなるんだ。
「ごめん、〇〇。用事で行けなくなった。」 母親が息子との約束を破る。
「バイバイ、〇〇。あんたなんか大嫌い。」 子供が友達との約束を破る。
「別れよう、あなた。もう好きじゃない。」 女性が旦那との約束を破る。
みんな、みんな、嘘を付く。人の大半は嘘なんだ。人は嘘で作られるんだ。
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#約束だよ②
私は、自分と約束をした。おかしなことって思うでしょ?でも、ホントなの。
ここまで聞いて、あなたは私が自分とどんな約束をしたと思い浮かべたかな?
「真面目にする」? 「友達と仲良くする」? うんうん。全部、正解だよ。
私は、「自分に正直に生きろ」って約束をした。あなたのために説明するね。
自分がこうしたいと思ったことをし、ありのまま生きていき、全力で楽しむ。
これが私の望む世界。素晴らしい世界なんだよ。あ、でも、ルールは守るよ。
最低でも、人を傷つけないことは絶対だし、迷惑をかけること絶対にダメだ。
だからまあ、限度を守って、「自分に正直に生きる」。これが私の最高なの。