百合

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5/8/2025, 2:31:09 PM

届かない…

3回生はかっこよく見える。
もはや大学における通説のようなものに私は見事に踊らされていた。
サークルは同じだけど自分とは関わりのなかった先輩
最初はなんとも思っていなかった。けど偶然同じ授業をとっていて、先輩を見つけた時に何故か嬉しくなってしまった
それから授業のたびに先輩を探して、話せもしないのにその授業が楽しみで仕方がなかった。
その授業も今日で終わってしまう。
そして来週には先輩はサークルを引退する。
そうすればもうサークルには来なくなるし、見かけることもほとんどなくなってしまう。
先輩のことが好きなのかははっきりとわからないけど、このままは嫌だという気持ちはわずかながらにあった。
前の授業が終わってその授業の教室に移動する。
開始までまだ5分あるというのにそわそわして仕方がなかった。
10秒ごとに周りを見渡す。教室の扉が開くたびにそっちを見る。
授業開始のチャイムが鳴って、先生がマイクで話し始める。
それでも扉はもう開く気配がなかったし、後ろの方で座っている様子も確認できなかった。
すると先生が「こんな日によく来たね」と私たちに向かって言った。なんのことかと思いスマホを見ると時間の上に今日の日付が見えた。
「12月24日」
大学は26日まで普通にあったから全くもって気づかなかった
そうだ…今日クリスマスイブだ

この後の先生の話なんか入ってくる気はしなかったが、私は文字で溢れているプリントを見るために下を向いた

5/6/2025, 4:22:53 PM

ラブソング

私の歌書いてみてよ
学園祭での演奏準備をしている彼にそう言ってみた
すると彼は
君を歌の枠におさめたくないから書かない
と真剣に答えた。冗談のつもりで言ったから、意外と真剣に答えられて驚いたが、彼の言葉は嬉しかった。
最後まではっきりとは言わないロマンチスト気取りだと分かっているから私は、歌にしたら終わりが見えてしまうような気がして嫌だから歌にはしないと彼の全ての気持ちを自分の中で解釈することにした。

あれから8年
彼は今、人気バンドグループのボーカルとして活躍している。
彼が作曲するラブソングは心当たりがあった。というか心当たりしかなかった。
夜2人で散歩しながら見た桜が普段よりも美しかったこと
喧嘩した時買ってきたプリンが苦手な抹茶味で、より激しくなったこと
彼からもらったネックレスだけ置いて二度と戻らなかったこと
私と彼と思い出が数年越しに歌となって表れていた
私の歌書いてみてよ
彼はこの提案を8年越しに受け入れた。
私が言ったことだから怒る理由も悲しむ理由も私にはない
でも、ひとつだけわがままを言うとしたら
歌じゃなくて思い出のままにしてほしかった

4/26/2025, 1:09:04 PM

7時のアラームを止める
起きて、顔を洗って、朝ごはんを食べる。
洗顔と化粧、着替えをして走って駅へ向かう。
20時まで仕事をして買い物をして帰る。
夕ご飯を作って、食べてお風呂に入る。
明日の予定を確認してから電気を消して寝る。

これがずっと変わらない私のルーティン
でもひとつだけ変わったことといえば、お酒をやめたということ。
1年前。飲酒運転の車に轢かれて亡くなったあの人を見たときから、私は好きだったお酒を、彼と飲んだお酒を見ることさえもできなくなった。
ものすごく仲が良かったわけでも、悪かったわけでもなかった。
でもいざいなくなると喪失感というものが現れてくるし、どこかで彼を探してしまう。
朝から彼のことを思い出す日は決まって調子が良くない。
電車に乗り遅れるし、小さなミスをするし、欲しかった食材がなくなってがっかりする。
今日もそんな調子の良くない日だった。
なんとか家に帰ってきてカップ麺でもいいかとお湯を沸かし始めるとインターホンが鳴った。
9時前だったからこんな時間に?と思いつつも、はーいと玄関を開ける。
すると宅急便のお兄さんが立っていた。何か頼んだっけ?と思いながらサインをし荷物を受け取る。
お湯が沸いたから入れに行こうと思ったが、宛名にふと目がいった。そこには私の名前ではなく彼の名前が書かれていた。
彼の名前を見た私は我を忘れてダンボールを無理矢理開けた。
中身は見覚えのあるものだった。
人気すぎて1年待ちのお酒。彼と一緒に選んだお酒。
今私が1番見たくないお酒だった。
送られてきたこのお酒に悲しむことも怒ることもできず、ただやるせない気持ちでいっぱいだった。
捨てようかとも思ったが、なんとなくもったいない気もして、でも取っておくのも違う気がした。
とりあえずカップ麺にお湯を入れ待っている間に、奥にしまい込んであったグラスを引っ張り出してきた。
お揃いで買ったものだからなんとなく2つ出してみる。
そして2つのグラスにお酒を注いでみた。
口元にグラスを持ってきたとき、お酒の匂いでぶわっと何か感じるものが来て目に涙が溜まった。
その涙をこぼさないようにグラスを一気に傾けた。
おかしいな、上向いたはずなのにそう思いながら、涙が流れていくのを静かに感じた。
目をそっと開け、もう1つのグラスを見たとき彼の手が見えたような気がした。そしててだけじゃなくて、体、顔、声。彼の全てが隣にあるような気がした。
「あぁ…ここにいたのね」
私は久々に笑ってみせた。

それからまたお酒がルーティンの中に組み込まれた。
私の人生を狂わせたお酒をもう一度好きになるには時間がかかるかもしれない。
でも飲んでいる時だけは彼がいるような気がする
そう思って私は2つのグラスにお酒を注ぐ





4/21/2025, 7:56:25 AM

星明かり

3年前から散歩に行くのが習慣になった。
朝はめっぽう弱いので、夜ご飯を食べ終わって気持ちよくお風呂に入るために9時ごろ携帯と鍵だけを持って行く
親からは危ないからと止められたり、友人からは1人で散歩って楽しいのなどと言われたりした
自分でもどうして1人で散歩をしようと決意したのか覚えていない
ただ、1人で歩くと何も考えずに済むし、夜はじぶんを飾らないで歩くことができる
危ないけれどできれば暗めがいい。自分の姿がバレてしまうから月明かりさえもいらないと思えてくる。
星明かりだけを頼りにして私は今日も外に出る

4/16/2025, 2:15:45 AM

春恋

春は出会いが増える
高校生の時はクラス替えがあっても大体が知っている人だったから大して出会いもなかった。
でも大学生になるとクラスという概念がないから授業が変わる度に出会いが増える。
新しい出会いだからといって浮かれると碌な恋愛にならない。
そのことは先輩からも自分の経験からもよくわかっている。
それでもビビッときたら動いてしまうのが人間の性である。 
まだ大学生。まだ二十代前半。
今後の経験のために碌でもない恋愛を始めてみようか

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