大好き
いつも一緒にいる友達に大好きっていうのは簡単だ。
「え、それ好きなお菓子!くれるの?大好き〜❤︎」
とか
「プリになんて書く?大好きとか良くない?」
とかノリもあるかもしれないが比較的言いやすい。
恋人に対しても素直にいうことができる。
朝起きて目の前に彼がいた時に幸せを感じて言ってみたり、大好きと言われて自分も答えてみたり。少し恥ずかしさもあるが案外いうことができる。
一方親に対してはどうだろう。
お弁当作ってくれてありがとうとか、学費出してくれてありがとうとか感謝は伝えることができるものの「大好き」は照れくさくていうことができない。
もちろん幼稚園とか小学生くらいまでは素直に言えていた。自分でもどうして素直に言えなくなったのか分からないが、今隣でテレビを見ている両親に「大好き」と伝えることはかなり躊躇われる。言ったところで、なにか欲しいものでもあるのなどと言われかねない。
でも声には出せないものの大好きなのは変わりない。
出来ればずっと一緒にいたいし、ずっとたわいのない話をしていたい。
しかしわかっている、ずっと一緒にいられないことも。
自然の摂理的には両親が先にいなくなるが、運命の悪戯によって私が先に逝くかもしれない。
もしそうなった時私は大好きと言えなかったことを後悔するだろうか。
半年前に祖父が亡くなるほんの少し前、私は祖父に小さな声で大好きだよと伝えた。
なんでもっと大きな声で素直に伝えられなかったのかと後悔もしたが、言えたことで祖父が亡くなったあと凄く辛いということはなかった。むしろ爽やかな気持ちになった。
祖父の時のように死に目に会えるかなんて誰も分からない、でももし小さな声でも伝えることができるなら私をここまで育ててくれた愛する人たちに伝えよう。
「大好き」と。
叶わぬ夢
幼稚園の時の夢はパティシエになることだった。
そもそも乳製品があまり得意ではないから、母から乳製品食べられないとなれないよと言われあっさりと諦めた。
小学生の時の夢は看護師だった。
親戚からの看護師は将来安泰だよという言葉を安易に信じて、卒業文集に将来の夢は看護師ですと書いた。
しかし自分が看護師に向いていない性格だと中学一年生の時に気づきすんなり辞めた。
そして中学生の夢は生徒会長になることだった。
急に夢がランクダウンしたように感じられたが、一方パティシエと看護師の時とは異なる自分の中の本気の夢ができたようにも感じられた。
立候補したのは私含めて3人。
ひとりはとても真面目で信頼できそうな天然パーマの男の子だった。
もうひとりはダンス部で友達が多いタイプの女の子だった。
私以外の2人は先輩からも後輩からも人気があったが、私は特に主要な部活に入っていたわけでもなかったから認知度が低かった。
そのため自分の負けはほぼ確定していた。
天パの男の子の応援演説者である子から
「なんで負けるって分かってるのに頑張るの?」
と言われた時は、
「可能性に賭けてみたいから」
などとカッコつけて返したが、内心悔しさと悲しさで溢れかえっていた。
そんな辛い選挙期間中にさらに辛いことが起きた。
生まれた時から一緒だった愛犬の腎臓が機能しなくなり死期が近いと言われたのだ。
遠い親戚のお葬式などに参加したことはあったが身近で死というものを感じる経験がなかった私は初めて味わう感情にどう対応していいか分からなくなった。
学校に行っている間に亡くなってしまったらどうしようと四六時中考えるようになった私は、学校で失敗することが増えた。
そして涙もろくなって感情が制御しにくくなった。
それでも弱い自分は見せたくなくて必死にいつもの自分を演じ続けた。
病院で伝えられた日から4日ほどたったある日、いつ亡くなってもおかしくない様子の犬を抱っこして最後の散歩に連れて行った。
橋の上でいつもなら気持ちいいと感じる風を肌で感じながら、犬に話しかけた。
「絶対に叶えて見せるからね」
と。叶わないことなんて自分が1番分かっていた。それでもやっぱり賭けてみたかった。
その日の夜中犬は亡くなった。悲しくて学校に行くのも億劫だったが、約束を果たすためにも私は涙を拭いていくしかなかった。
1ヶ月後、投票が行われた。
その1ヶ月間どんな結果でもいいくらい全力で挑んだ。初めてこんなに努力したと言っても過言ではない。
ただ、どんなに努力しようとも勝利の女神が私に微笑むことはなかった。
帰ってきてから両親にダメだった!と明るく行ってから、部屋に駆け込み亡くなった犬の写真の前で大泣きした。両親も私が表面上では明るくても内心は悔しいことは分かりきっていたから何も言わずにご飯を出してくれた。
あの選挙から何年もたった今。
私は叶わなかったあの夢を追いかけたことは何も後悔していない。思い出した時はいつもあの時全力で挑んだ自分を褒め称えている。
そして大人になった今でもいくつか叶わないような夢を持っている。私はこれからそれを叶えるために全力で挑むつもりだ。叶わなくてもいい、全力で挑んだことで得られる何かがある。私は生徒会選挙で会長という座よりも大切な考えを得ることができた。
叶わなかった時悔しい思いをすることも辛い思いをすることもわかっている。
それでも私は挑戦してみたい。
花の香りと共に
今日も楽しくも苦しくもない1日が始まった。
別に友達がいないわけでもない、試験があるわけでもない。
でもなぜか味気ないのである。
当たり前の日々がが1番幸せなことは分かりきっているがら味気なさすぎていつもとは違うことを少しずつしてみようなどと馬鹿なことを考えた。
まずはジーンズからスカートに変えてみた。
しかし自転車に乗るには裾が邪魔で少し後悔した。
お昼ご飯はしゃけおにぎりから刺激を求めて梅おにぎりににしてみた。
しかしそれも後悔した。
私ははちみつ梅しか食べれないことを忘れていた…。
休憩時間には飲み物はペットボトルのお茶から缶コーヒーに変えてみた。
しかし暑すぎて火傷した。また後悔した。
全てが空回りする1日で味気ないよりは気分が沈む1日になってしまった。
それでも懲りずに次こそは!と少し回り道をして帰ってみた。
スカートが邪魔なので自転車を押しながら…
「はあ」と今日1日分のため息を吐いて息を吸った時、ふわりと何かが香った。
なんの香りかと周りを見回してみる。でも特にお店屋さんがあるわけでもない。
「?」となりながらふと上を見上げてみる。
「あ!」と思わず声が出た。
黄色の小さい花々がシャワーのように傾れている。
そうか、もうそんな時期だったか。
上を見ながらゆっくりゆっくりと歩いていく。
そうしていたらなんだか今日あった嫌なことが嫌でもなくなって、なんだかいい日だったような気がしてきた。
明日もこの香りと共に歩めるだろうか。
もうミモザの時期ですね。
街のお花屋さんが黄色一色になり始めました♪
すぐに枯れてしまうのが悲しくてドライフラワーしか購入したことがありませんが、今年は花瓶に飾ってみるのもいいかもしれませんね
心のざわめき
私には2年前から交際している男性がいる
彼はファッションや自分の身の回りに関することは流行りに敏感なタイプでこだわりも強い。
こだわりが強いというとマイナスに聞こえてしまうかもしれないが、顔がかなり整っているのでどう自分を良く見せようかと研究するのも納得がいく。
そして、話をするのがとても上手で映画やドラマのあらすじを聞くと起承転結わかりやすく答えるものだからこっちまで観た気になるくらいだ。
身長が170届くか届かないかくらいなのをコンプレックスとしているが、私は別に気にしてもいないし逆にコンプレックスがあって良かったと思えるくらい魅力的な男性だ。
魅力的すぎる男性が私なんかと付き合っていいのかと不安を持つ一方、こんな素敵な恋人がいてなんて幸せだろうと優越感に浸る自分がいた。
しかし、顔が良くて話が上手いものだから周りに人が寄ってくる。他の男性が寄ってくるのは気分がいいが、女性が寄ってくるのはなかなかに気分の良いものではない。それにその女性たちは「こんな彼氏羨ましい」とか「本当にいい男だよ」と彼に面と向かって言ってしまうのでいつもハラハラする。
それでもそんな嫉妬は見苦しいなと自分を制しながら、私を見てほしいと言った雰囲気を少し醸し出しながら上手く彼と付き合っていた。
彼とデートに行くと彼のスマホは度々通知音が鳴る。
私は基本的に公式LINEしか届かないタイプなので、そんなに色んな人と連絡を取れるのはすごいなあと思いながらいつも過ごしていた。
そんなぽけっとした考えを私が持っているとは知らずに彼は私を安心させるために聞いてもないのに連絡内容を報告してくれる。
しかし連絡の相手は半数が女性からである。内容的にもおすすめのコンビニスイーツやら、その女性の彼氏の様子やら浮気を疑うものではないにせよやはり気分がいいものではない。別に言ってくれなくてもいいのになあと思いつつ「でも不安にさせたくないし」と返されて変な空気になっても嫌だし面倒くさいので黙って聞いておく。
顔もよし、コミュニケーション能力よし、私への気遣いよしの恋人を持って私は幸せだと思う。
幸せだと思いながら私は彼にハグをする。
でも体が重なっているはずなのに、どうしてだろうか。
距離がある気がする。
何も心配することはないはずなのになぜか不安になる。このざわめきはなんだろうか。
どうか勘違いであってほしい。
そう願いながら私は彼にキスをする。
君を探して
漫画やアニメを見ると前世が出てくることが多々ある。
前世は辛い経験をしたけれども今世ではそうならないように楽しく生きようとか、前世では結ばれなかった恋人と今世では幸せになりたいとか。
でも、残念ながら私には前世の記憶というものは存在しない。
だから、桜舞い散る入学式でなんだか見覚えのある姿を見つけて必死に追いかけてみたら前世の好きな人でした。やっと、やっと会えた…。
なーんてことは起きたことがない。
そもそも現実的に考えたら、相手が前世を覚えているとは限らないし、性別が変わっているかもしれないし、年齢も全く異なっているかもしれない。
でも前世というものになんとなく惹かれるものがある。
もし私に私の知らない前世があるとするならば
もし私に前世で愛する人がいたならば
私はあなたを探そう
だからあなたは私を探して