たくさん良いところを見つけてきた。
たくさん一緒の時間を過ごした。
たくさん言葉を重ねた。
たくさん想ってきた。
それでも、あなたの隣には大切な人がいる。
好き。
ずっと好きだよ。
大好き。
大好きなのに、世界で一番大嫌いな人。
大嫌いなんだから、この大好きも消えてなくなってよ。
『好き嫌い』
#9
人気のない高台から、街を見下ろす。
今この目に映るのは、広い空に、遠くに聳える山々。
会社や商業施設や住居などの大小様々な建物。
川を越える線路の上を走る電車に、かろうじて見える車。
不思議な気持ちになる。
今、見渡せる範囲には見知らぬ人々が沢山住んでいて、
今この瞬間、それぞれの営みを歩んでいるんだよなって。
起きる人、寝る人。
家にいる人、外出している人。
仕事や学校の人、休日の人。
一人で過ごす人、誰かと過ごす人。
結婚する人、離婚する人。
好調の人、不調の人。
"書く習慣"というアプリを使う人、使わない人。
この投稿にご縁があった方、ご縁がなかった方。
人気のない高台から、街を見下ろす。
街。不特定多数の人々が暮らすコミュニティ。
今この瞬間も、人々の営みが紡がれていると思うと、
なんだかとっても、たまらない気持ちになる。
『街』
#8
高校生だった私へ
好きでも嫌いでもなかった勉強。
ひとまずは将来の夢のためにって、休みのない部活との両立を頑張っていたね。
あなたの努力のおかげで、無事資格を取って、そして、幼稚園の頃からの夢を叶えることができたよ。
でもね、知らない土地に住んで、今まで会ったことないような人と会話をして、知らないものを知ろうとしたら、他にもやりたいこと、楽しみたいことが沢山できちゃった。
そうしたらね、気付いたんだ。
最低限で良いって思っていた勉強は、一生涯の糧になるくらい必死になってやるべきだったんだぞ、って。
何かに興味を持つ、何かに挑戦する、物事を知る、背景や仕組みを理解する、120%で何かを楽しむ。
全部、知識がなくてもできるけど、知識は"楽しい""面白い"の基礎になって、もっともっと楽しくなって、知識があることで選びとることもできるんだよ。
歴史を知っていれば、もっとあの映画を理解できたよ。
体の仕組みを理解していれば、泣かなくて済んだかも。
あの科目の知識を元にして、挑戦できることがあるよ。
知識があれば、あの感動と喜びをもっと感じられたね。
勉強しておけば、やりたいことの最短ルートに辿り着けるし、やりたいことを目一杯楽しめるし、いつかやりたいことがなくなったって、勉強した分の選択肢ができるよ。
なにより、自信につながる。
勉強して、知識をつけて、根拠を理解しているんだと自信がつく。その自信が、提案したり、説明することへの自信にさらに繋がっていくんだよ。
ちょっと話が脱線しちゃったね。
つまり、"やりたいこと"を"充分にやりきる"には、どんな科目であっても勉強が大事だったよ、ってこと。
何歳になっても、やりたいことを追いかけよう。
私も、がんばるね。がんばりたい。
『やりたいこと』
#7
ひやりとした空気に揺さぶられ、ふと目が覚めた
薄ぼんやりしている視界に瞬きを数回
晴れた視界に映る部屋の中はまだ薄暗い
広がる闇が夜明け前だとそっと告げている
再びひやりとした空気に揺さぶられると
それと同時にひらりと揺れるカーテンが目に映る
ああ、昨夜は少しだけ窓を開けていたんだっけと思い至る
カーテンの隙間からチラリと窓の外を覗く
当然外も暗闇に包まれていて、人の気配もない
どうやら外の世界はまだ眠り続けているようだ
静かな世界を駆ける空気は、ひやりとして気持ちが良い
どれくらいぼうっとしていたのか
気が付くと人は活動を始めていて
そして薄暗くとも既に視界を妨げるほどではないようだ
眠っていたはずの世界は少しずつ覚醒し始めていた
そのまま眺めていると、驚くほど一瞬で世界が明るくなる
何年ぶりだろうか、朝日が昇るのを見届けたのは
いつの間にかひやりとした空気はなりを潜め
代わりに朝日と同じ色を携えて温もりを分けてくれる
こんなに清々しく、まっさらで、あたたかい
それでいてほんの少し苦しさを抱くこの瞬間を迎えたのは
一体いつが最後だったか
忙しなくて充実していると見栄を張りながら
その実、中身のない日々を無為に過ごす中
今この瞬間に朝日の温もりに包まれたことは
きっと人生の中で最良で、幸福なことなんだろう
『朝日の温もり』
#6
岐路、とは。
1 道が分かれる所。分かれ道。
2 将来が決まるような重大な場面。
3 本筋ではなく、わきにそれた道。
岐路。社会人となるまで何度も立ち会ってきた、らしい。
流されるように大人になった自分には、"将来を決める重大な場面"というよりも、"数ある分かれ道の中から舗装された安全そうな道を選ぶ"。そんな意味合いが強かったのかもしれない。
学生に対して節目節目で「ここが人生の岐路だぞ」なんてよく言うが、社会人になったとて公私共に自分の人生を左右する分かれ道なんて多数存在している。
確かに、最初の選択肢で最良を選び取れれば、その後の人生も安泰だろう。しかし、「人生の岐路」とまで言われてしまうと、"ここで誤った選択をしてはならない"、そんな圧に潰れてしまうことだってある。それは選ぶその時だけではなく、選んだその後、遅効性の毒のようにじわじわ侵食してくる。選んだその先が思い描いたものではなかった時、「あの時あっちを選んでいれば」そんな呪いのような思考に支配されることだって十分にありうる。
岐路。
将来を決めるような重大な場面。
人生は後戻り出来ない。そんな意味を含めるなら自分の歩んだ道を後戻りすることだってできない。それならば、己が歩んできた道に囚われずに、全くの新しい道を選び続けていく方がよっぽど健全だ。
選んだ道はどこか別の道に通ずるものだし、たとえ行き止まりだとしても、道ならば開拓することだってできる。
岐路。
ただの分かれ道。本筋から逸れた脇道。
これまでの人生、流されるように大人になったとはいえ、それなりに努力は続けてきた。
それなら、一度きりの人生、脇道に逸れることがあったってもいいかなって、そう思いたい。
『岐路』
#5
※コトバンク参照