ひやりとした空気に揺さぶられ、ふと目が覚めた
薄ぼんやりしている視界に瞬きを数回
晴れた視界に映る部屋の中はまだ薄暗い
広がる闇が夜明け前だとそっと告げている
再びひやりとした空気に揺さぶられると
それと同時にひらりと揺れるカーテンが目に映る
ああ、昨夜は少しだけ窓を開けていたんだっけと思い至る
カーテンの隙間からチラリと窓の外を覗く
当然外も暗闇に包まれていて、人の気配もない
どうやら外の世界はまだ眠り続けているようだ
静かな世界を駆ける空気は、ひやりとして気持ちが良い
どれくらいぼうっとしていたのか
気が付くと人は活動を始めていて
そして薄暗くとも既に視界を妨げるほどではないようだ
眠っていたはずの世界は少しずつ覚醒し始めていた
そのまま眺めていると、驚くほど一瞬で世界が明るくなる
何年ぶりだろうか、朝日が昇るのを見届けたのは
いつの間にかひやりとした空気はなりを潜め
代わりに朝日と同じ色を携えて温もりを分けてくれる
こんなに清々しく、まっさらで、あたたかい
それでいてほんの少し苦しさを抱くこの瞬間を迎えたのは
一体いつが最後だったか
忙しなくて充実していると見栄を張りながら
その実、中身のない日々を無為に過ごす中
今この瞬間に朝日の温もりに包まれたことは
きっと人生の中で最良で、幸福なことなんだろう
『朝日の温もり』
#6
6/9/2024, 12:34:02 PM