衒凪

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10/26/2023, 12:41:19 PM

コンコン、と扉を叩く音が聞こえてきた。日もとっくに沈んだ夜の9時半に、その音は静寂を破るようにこの部屋に響いた。いつもの言葉を投げかけて、いつもの言葉が返ってくる。何気ないやり取りの一瞬一瞬こそが、ひどく大切な気がしてならない。

[愛言葉]

10/24/2023, 11:28:39 AM

ずっとずっと呼んでいた
ただその手を掴んでいたくて

いつの間にか隣が当たり前になっていた
今はそれさえ手放し難い

せめてほんの少しでもいい
どうか離れる事を躊躇ってくれないだろうか


[行かないで]

10/22/2023, 9:35:09 AM

冷たくなった君の手に触れる。いつも感じていた温度はもうそこにはなくて、君の質量だけは何となく感じられた。君がやがて朽ちて灰になるなど、未だに想像がつかない。ずっと君は傍にいると思っていた。ずっとその体温は温かいのだと思っていた。今はただ、君がいないという事実だけが僕に覆いかぶさっている。心はずっと叫んでいる筈なのに、涙は一滴も流れない。もし君がいなくなったのなら、僕は枯れてしまう程に泣き叫んでしまうと思っていたけれども、現実として起こるとまるで何も出てこない。僕は君を想っているのに、どうして何も出てこないのだろうか。いっそこの身が朽ち果てるその時まで、泣き叫んでいられたら良かったのに。

[声が枯れるまで]

10/21/2023, 7:45:22 AM

その日、いつもよりやけに強い風が吹いていたのを覚えている。木々が揺れ動き時々葉が散ってゆくその下で、僕らはいつも待ち合わせをした。ここの景色は来る度少しづつ変わっていき、何時だって季節の移り変わりを感じさせられた。来る度に、これが最後になるかもしれないとお互いに思うけれども、いつも君は次を信じて僕と約束するのだ。初めてあった日も、約束を初めて持ちかけてきたのも、僕がこうやって生きようと思えたのも、いつも君がきっかけだったんだ。

[始まりはいつも]

10/17/2023, 11:08:02 AM

ずっと引き出しの中に仕舞われている、小さなオパールが埋め込まれたネックレス。数年前の今日、私への誕生日プレゼントとしてあなたがくれたそれは、今だにそこに置かれたままだ。私に明るい未来があるように、そんな願いを込めたと言って私の首にかけてくれたね。それだけが、その時から今までの私の支えだったんだ。

[忘れたくても忘れられない]

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