衒凪

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冷たくなった君の手に触れる。いつも感じていた温度はもうそこにはなくて、君の質量だけは何となく感じられた。君がやがて朽ちて灰になるなど、未だに想像がつかない。ずっと君は傍にいると思っていた。ずっとその体温は温かいのだと思っていた。今はただ、君がいないという事実だけが僕に覆いかぶさっている。心はずっと叫んでいる筈なのに、涙は一滴も流れない。もし君がいなくなったのなら、僕は枯れてしまう程に泣き叫んでしまうと思っていたけれども、現実として起こるとまるで何も出てこない。僕は君を想っているのに、どうして何も出てこないのだろうか。いっそこの身が朽ち果てるその時まで、泣き叫んでいられたら良かったのに。

[声が枯れるまで]

10/22/2023, 9:35:09 AM