4/21/2025, 12:32:02 PM
桃色の花弁が微かに揺れている。その彩りは風に乗って空を行く。風は草木を震わせ、花弁は水面に幾重もの輪を響かせる。いつか風たちが、その声をささやいてくれるだろうか。
[ささやき]
4/20/2025, 1:05:02 PM
ざく、ざく、と地面を覆い尽くす草を踏みながら、暗闇の中に点々と灯る輝きに導かれていく。永遠に続いているようにさえ見える地平線。暗く、だがはっきりと見えるその先に、とうに消えてしまった手元の光さえ要らなかったのだと思わされた。
[星明かり]
11/4/2023, 5:42:24 AM
姿見の前に立って自分の姿を見つめてみる。
瞳の奥には自分自身の姿が反射して見える。
鏡にそっと手を触れてみると、微かに温度を感じた気がした。
[鏡の中の自分]
11/1/2023, 9:33:33 AM
それこそが正に、我々の求めていたものだったのだ。皆が幸福の中に死にゆくこの世界こそが我々を救うものなのだ。
[理想郷]
10/29/2023, 12:46:22 PM
この世界は救われた。再び平和が訪れ、もう恐怖に怯える必要などなくなったのだ。人々に笑顔が戻り、二度と闇に呑まれる事は無いのだろう。でも、僕らだけは知っている。この世界は数多の犠牲の上に出来ているのだと。僕はここに、確かに僕らはいたという証を残したい。他の人々が決して知ることのないその存在だけれども、記録だけは残したいのだ。或いは、誰かがここへ辿り着くなんて事もあるのだろうか。いつかこれを知る人がいるならば、その人物が僕らの物語を思い出してくれるのならば、僕らはきっと救われるのだろう。
[もう一つの物語]