過去を彷徨う夢だ。
名前のわからない彼を私はよく知っている。
黙って直ぐ側にいる、安心する感覚。
姿は知っている、でも名前を呼ぶことが出来ない。
声も顔もぼやけて、はっきりとは理解出来なかった。
でもよく知っている。
ずっと前から側にいたと断言出来る。
目が醒めるまで、ぼんやりと温かな夢の中で。
季節の花々が四季に関係なく咲き誇る場所で
花畑の真ん中にいる。現実のしがらみなど一切ない。
だた自分自身を包み込む、温かな世界がそこには広がる。
「ここは、どこですか」
「…」
彼は小さな声で何かを喋ったが、全く聞こえなかった。
「もう疲れた、ここにいたいです」
「…め」
また何かを喋ったが聞こえない。だが
彼は首を何度も横に振った。
「ダメだということですか、もう頑張れないです」
「…め」
また彼は首を何度も振る、ぼやけていても悲しげな表情をしているとわかった。
「人生の半分は辛いことしかないっていうのに、これから良いことがある保証はないのに。どう頑張れと」
皮肉のような言葉を言った、悲しむ彼に言うような言葉じゃないとわかっていても。止められなかった。
その時、初めて彼の声がはっきり聞こえた。
「保証はないですけど、もうすぐ会えます。だからその時までは待っていて」
彼はそう言った。
光が降り注ぎ、目が醒める。
どうやら日差しが温かかったものだから、眠ってしまったようだ。
ぼんやりまだ最後の言葉は確かに覚えていた。
真面目に生きてるより、
不真面目な方が楽に生きれたり。
頑張ってるのことが報われない。
美味しいところだけ持っていかれる。
人を虐めてきた人にそれ相応の罰なんてない。
指先ひとつで人を殺せてしまうのに。
椅子に座って居眠りして、野次だけ飛ばすしか、脳がない政治家が私達の働いた血税でのうのうと生きてる。
どれだけ学歴があっても人となりは優秀とは限らない。高卒でも専門卒でも優秀な人はたくさんいるし。逆に大卒だから仕事出来るわけでもないんだ。
でも大卒の方が給料いいんだよ。
本当に馬鹿みたい。
世の中が新しくなろうとしてるのに、そういう根幹からはなかなか変わらない。
歯痒くて仕方がないよ。
若くて、才能のある若者が自ら命を絶ってしまう。
物心つかないような小さな子が虐待されてしまう。
保守的でいつまでも昭和から抜け出せない老害ばかり生き残って。
少子高齢化とかいって、若者に罪を擦り付ける。
「結婚しないお前らが悪い」「子供を産まない奴らが悪い」そう言われているようで内心腹立たしい。
泣くな。
泣いたら、負けだ。
泣くのは弱いからだ。
精神の強さ=泣かないこと。
そんな方程式あるわけない。
辛いときは泣いてもいいんだって。
教える教育だったら。
今、こんなに生きづらくない。
無意識に「泣かない」って意地で我慢している。
もう疲れたでしょう。
泣きたいときは泣いてもいい。
ずっと走り続けることなんて出来ないんだから。
たまには自分の感情に蓋をせず、正直に生きろ。
あなたにとって怖いものは?
そういう質問をしたとして、私の同僚や上司は
ほぼ「俺に怖いものなんてねぇよ」と返すだろう。
そのわりに、昔話や。
嫌味ったらしくロレックスつけてきて「安かった」とか自尊心の塊みたいな言葉の鎧を装備している。
ギャンブルに金を注ぎ込んで、親の援助を受けていても。「自分が好きにやってるからいいんです」と強気に見せる。
それって怖いからこその虚勢じゃない?
自分の世界が全てで、その世界では自分自身が王様でいられるけど。
いざ外に出たら、自分の言い分が罷り通らないことが怖いんじゃないの。
私が怖いものは、自分のしてきた努力が無駄になることだよ。自尊心を守る鎧なんかと一緒にすんな。
夜中に眠れなくて、外に出た。
真冬の夜空は特に星がよく見える。
僅かな灯りで足元を照らしながら、冷たい空気を吸い込む。雪国ではないので雪があったら、もっと静かで異世界みたいだと思った。
虫の声も、動物の声もあまり聞こえない。
勿論、人の声も聞こえない。
あらゆる雑念を消してくれる、寒さと静けさ。
入ってくる情報は真っ暗な空に名も知らぬ星が輝くことだけ。
星が溢れるほど満ちた空ではなかった、適度な隙間と間隔を保ち。大きな星も小さな星もただ燦然とそこに在り続ける。
そろそろ眠れそうな気がしてきた。