泣くな。
泣いたら、負けだ。
泣くのは弱いからだ。
精神の強さ=泣かないこと。
そんな方程式あるわけない。
辛いときは泣いてもいいんだって。
教える教育だったら。
今、こんなに生きづらくない。
無意識に「泣かない」って意地で我慢している。
もう疲れたでしょう。
泣きたいときは泣いてもいい。
ずっと走り続けることなんて出来ないんだから。
たまには自分の感情に蓋をせず、正直に生きろ。
あなたにとって怖いものは?
そういう質問をしたとして、私の同僚や上司は
ほぼ「俺に怖いものなんてねぇよ」と返すだろう。
そのわりに、昔話や。
嫌味ったらしくロレックスつけてきて「安かった」とか自尊心の塊みたいな言葉の鎧を装備している。
ギャンブルに金を注ぎ込んで、親の援助を受けていても。「自分が好きにやってるからいいんです」と強気に見せる。
それって怖いからこその虚勢じゃない?
自分の世界が全てで、その世界では自分自身が王様でいられるけど。
いざ外に出たら、自分の言い分が罷り通らないことが怖いんじゃないの。
私が怖いものは、自分のしてきた努力が無駄になることだよ。自尊心を守る鎧なんかと一緒にすんな。
夜中に眠れなくて、外に出た。
真冬の夜空は特に星がよく見える。
僅かな灯りで足元を照らしながら、冷たい空気を吸い込む。雪国ではないので雪があったら、もっと静かで異世界みたいだと思った。
虫の声も、動物の声もあまり聞こえない。
勿論、人の声も聞こえない。
あらゆる雑念を消してくれる、寒さと静けさ。
入ってくる情報は真っ暗な空に名も知らぬ星が輝くことだけ。
星が溢れるほど満ちた空ではなかった、適度な隙間と間隔を保ち。大きな星も小さな星もただ燦然とそこに在り続ける。
そろそろ眠れそうな気がしてきた。
毎日。毎日。
必死に生きてる。
何でこんなに必死なんだろう。
現代人に安らかな気持ちでいられる時間はどのくらいあるんだろうか。
穏やかに見つめる未来など想像出来ないから。
少しでも平穏にいられるように、毎日を必死に生きてる。それは穏やかさとはとても遠いもの。
寝ている時さえ、安らかともいえない。
もっと気楽に考えられる、性分ならこんなに疲れないのにな。
何でこんなに面倒臭いんだろう。
彼は多くを語らない。
昔の武勇伝とか。裕福な実家の話とか。
他人にとって退屈で耳障りな言葉をわかっている。
彼が語りかけるのは、優しい言葉だけだ。
話さずともわかる、適度な距離で。
見守ること、さり気なく気遣う優しさ。
あえて何も語らない。
寄り添うだけで、意思の疎通がとれる。
ずっと一緒にいるから、当たり前なわけでもない。
居心地の良いのは彼がいるからだ。
「私が好きだと言ったら。どう思う?」
「…もうとっくに同じ気持ちですよ。」
彼は隣で照れながら言った。