彼は多くを語らない。
昔の武勇伝とか。裕福な実家の話とか。
他人にとって退屈で耳障りな言葉をわかっている。
彼が語りかけるのは、優しい言葉だけだ。
話さずともわかる、適度な距離で。
見守ること、さり気なく気遣う優しさ。
あえて何も語らない。
寄り添うだけで、意思の疎通がとれる。
ずっと一緒にいるから、当たり前なわけでもない。
居心地の良いのは彼がいるからだ。
「私が好きだと言ったら。どう思う?」
「…もうとっくに同じ気持ちですよ。」
彼は隣で照れながら言った。
3/13/2024, 11:46:45 AM