【貴方と私】
⚠️ガールズラブ要素が入ります
ガララ
教室の扉を開け、騒がしい室内に足を踏み入れる。
私が入って来ても誰も気づかないほどに存在を消し、そそくさと自分の席へと座る。
カバンを下ろしたところで初めて息が休まる。
『ふぅ、、』
ガラララッ
『おはよ〜!!!』
突然の元気な声に肩が跳ねる。
入り口には彼女の挨拶に気づいたクラスメイトがわらわらと彼女を囲う。
彼女は人気者でいつも人に囲まれているせいか、一度も顔を見たことがない。
『あゆみ元気〜?やっば寝不足?今日保体だよ!大丈夫?』
聞こえるのはワントーン高い鈴の様な声。
きっと、純潔で聡明で頭がいい子なんだろう。
誰とでも仲良くできて、先生とも気軽に話せる。
『いいなぁ。』
ボソリと呟く。
教室の騒ぎに呑まれて、私の声は消え失せた。
ーーー
キーンコーンカーンコーン
『みんなじゃあね〜!』
今日もやっぱり、声だけしか聞けない。
『、、、あ、今日図書係だ。』
放課後の図書室のお世話をする係になっている私は時間に遅れない様教科書をカバンに詰めて図書室へと向かった。
カララ、、
控えめに扉を開け、顔だけ覗かせて図書室の見回す。
『、、いない。』
誰もいない。私はこの静かな図書室が大好きだ。
それに人がいないと来たらもう、、最高だ。
『よし。』
人がいない時は、本の返却場所に溜まっている本を元の場所に戻す仕事をしている。
司書の先生はやらなくていいよ。と言ってくれるが、正直言ってこの仕事が1番好きだ。
あるべき場所に本達を直して行く。
スッキリして楽しい。
『♪〜♪〜』
ついつい鼻歌を歌いながら夢中になっていて気づいていなかった。
後ろに人がいたことに。
『えぇっと、、あの、』
突然声をかけられ驚き振り返り本棚に張り付く。
この声に、聞き覚えがあったから。
いつも、羨ましくて嫉妬さえしていた人物。
自分もこうなりたいと密かに思っていた人。
『、、、歌、上手だね。』
予想とは、随分と違った。
純潔とは言い難いバチバチのピアス。
派手に染めているショートヘアー。
目元に光に反射してキラキラとアイシャドウが光る。
その容姿に似合わぬしっかり着こなした制服。
『よ、、良妻、麻里奈さん、、。』
絞り出す様に声を出せば、んー?と首を傾げ、しげしげと見つめられる。
『あ〜!由麻美玲ちゃん!』
思い出した様に手をポンと叩く良妻さん。
『どうも、、。』
『と、図書の係、、なんだね。』
イメージとは違った。けど、悪い方には転がらなかった。
赤面して、目を泳がせている良妻さんが、とても愛らしかったから。
『あのぉ、、あがり症なんですか?』
核心を突くと、ギクッという効果音がつきそうなくらいに肩を跳ねさせる良妻さん。
『こ、このことは、、』
『さ、さっき歌ってたのは、、』
『『秘密で。』』
2人一緒に人差し指を唇に当て、その後笑い合った。
ーー
『ごめん、遅れて、、』
カフェに入って来た麻里奈に手を振り、席に招く。
『いいよ。昔の思い出蘇らせてたから退屈しなかった。』
笑いながらそう言えば、ポッと顔を染める麻里奈。
それがとんでもなく可愛く、揶揄ってやりたくなる。
『麻里奈、最初のイメージと違って驚いたもんなぁ。私とは正反対!住む世界が違うって思ってた。』
『、、正反対とか、住む世界が違うとか、ダメ!私は美玲がいないと生きていけない。』
私の手に自分の手を重ね、ギュッと指を絡める。
『私と、美玲は、支え合っているんだよ。私が美玲を支えて、美玲は私を支えてる。だから、そんな事言わないで?』
私の手を自分の唇に近づけ、薬指についている銀のリングに優しい口付けを落とした麻里奈。
『うん。ありがとう。麻里奈。』
私もだらしなく笑い、麻里奈の薬指についている誓いのリングにそっと、口付けをした。
【柔らかい雨】
『アンタなんかいなくなれば良い!!!』
つい、そう言ってしまった。
家で姉と喧嘩した。
姉は生まれつき体が弱く、母達はつきっきりで私に構ってくれなかった。
そんな母にも、姉にも、存在自体が私のストレスだった。
ついいつもの喧嘩がヒートアップし、姉に酷いことを言ってしまった。
外は曇天で今にも雨が降り出しそう。
私は家から飛び出したのが悔しくて、姉が羨ましくて、大粒の涙を流しながら歩道を歩く。
それに呼応する様に雨が降り、私の心を移す様に土砂降りになった。
痛い雨。私の悪心を写しているみたい。
嫉妬と悲しさの涙が頬を伝うたびに、チクチクと皮膚が痛む。
泣き疲れ、道の端でうずくまる。
三角座りで顔を埋める。
しばらくそうしていると、ふと頭に当たっていた雨粒が消えた。
泣き腫らした顔を上げると、息を切らせた様子の姉が傘を渡しに差し出していた。
『はぁ、はぁ、、帰るよ。』
『、、アンタは良いよね。お母さんから優しくされて。』
口を開けば嫌な言葉ばかり。
こんな自分も大嫌い。
『、、私のことはどう思ってもらっても良いよ。でもね、、私のことで自分を嫌いにならないで。』
姉は濡れて冷たい私の体を抱きしめる。
『何よ、、私の気持ちなんて知らないくせに。』
『うん。』
『いつも寝てるくせに。』
『うん。』
『何にもできないくせに。』
『うん。』
『、、、ごめんね。お姉ちゃん。』
『いいよ。ほら、立って。お母さん心配してる。』
姉の手を取り、立ち上がった時にはもう雨は晴れてて暖かい太陽が顔を出していた。
『、、、大好きだよ。』
『うんっ、、』
柔らかい雨が、私の頬を伝った。
【一筋の光】
ほら 見えている
1つの光が
絶望を希望に変える 光が
ほら 見えている
私達の未来が
可能性が無限大の 未来が
ほら 見えている
私の愛する人が
綺麗な笑顔で笑ってる
守りたくなる様な笑顔が
ほら 見えている
小さな赤子が
まだまだ未熟児の 天にも響く産声が
ほら 見えている
君たちの中にある 夢が
今はまだ気づけていない 力
秘められた自分だけの力が
君の中にも ある
【哀愁をそそる】
何も思いつかない!!
一旦休止
【鏡の中の自分】
ボーン、ボーン、、
柱時計が午後2時をさす。
不気味な音色を奏でながら午後2時を闇夜に潜む者達に知らせる。
屋敷の洗面台には蝋燭の様な淡い光が漏れており、影が広がり大きなオバケの様。
『、、午後2時。』
何かを決心する様に女は鏡を睨む。
少しばかり緊張しているのか、洗面台に置いている手に力が籠っている。
『よし、、』
一度深呼吸をした女は、鏡を見つめ問いかける。
『己写しの鏡よ。私を写して。』
瞬間、鏡の中の女はぐにゃりと揺れ、女が驚きと恐怖で体を強張らせている間に元の女を写した。
『これが、本当の私?』
鏡の中の女は自分より一際綺麗。
目もくっきりしていて、鼻筋も心なしが高い。
『、、、いいな。』
そう、呟いた。
今、目の前には相変わらずの私。
午後2時を1分過ぎ、鏡はぐにゃりと私を歪ませる。
『フフ、じゃあね。私。』
目筋鼻がくっきりとした綺麗な私は、ランプを持って洗面台を離れていった。
『待って!!出して!』
『貴方がいいなぁって言ったじゃない。だから、、、ね?』
洗面所を出て行こうとしている私を追いかけるも、目の前には見えないガラス。
もどかしくてバンバン叩くも、びくともしない。
やがてパタンと扉は閉まり、無情にも鏡は逢魔時の夜を写した。