【鏡の中の自分】
ボーン、ボーン、、
柱時計が午後2時をさす。
不気味な音色を奏でながら午後2時を闇夜に潜む者達に知らせる。
屋敷の洗面台には蝋燭の様な淡い光が漏れており、影が広がり大きなオバケの様。
『、、午後2時。』
何かを決心する様に女は鏡を睨む。
少しばかり緊張しているのか、洗面台に置いている手に力が籠っている。
『よし、、』
一度深呼吸をした女は、鏡を見つめ問いかける。
『己写しの鏡よ。私を写して。』
瞬間、鏡の中の女はぐにゃりと揺れ、女が驚きと恐怖で体を強張らせている間に元の女を写した。
『これが、本当の私?』
鏡の中の女は自分より一際綺麗。
目もくっきりしていて、鼻筋も心なしが高い。
『、、、いいな。』
そう、呟いた。
今、目の前には相変わらずの私。
午後2時を1分過ぎ、鏡はぐにゃりと私を歪ませる。
『フフ、じゃあね。私。』
目筋鼻がくっきりとした綺麗な私は、ランプを持って洗面台を離れていった。
『待って!!出して!』
『貴方がいいなぁって言ったじゃない。だから、、、ね?』
洗面所を出て行こうとしている私を追いかけるも、目の前には見えないガラス。
もどかしくてバンバン叩くも、びくともしない。
やがてパタンと扉は閉まり、無情にも鏡は逢魔時の夜を写した。
11/3/2023, 11:56:26 AM