シン

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12/7/2024, 11:25:01 AM

【部屋の片隅で】
あの日の思い出
忘れたはずのものたち

でも、確かにあったもの

辛く苦しくて、逃げたくて
部屋の片隅に追いやったはずのもの

いつのまにか忘れてしまっていた

引っ越しが決まったため
部屋の片付けを始めた

部屋を片付けていたら
出てきたあの日の思い出たち

あんなにも逃げたくて仕方なかったのに
今となっては大切な思い出になっていた

数えきれない程の思い出が
この部屋には詰まっている

今まで、ありがとう
“行ってきます”

12/6/2024, 12:25:42 PM

【逆さま】
僕らは双子だ
心優しい兄のダイドと
頭の良い弟のライト

実の両親でさえ
僕らの見分けがつかないんだ

だから、たまに服を取り換えっこして
お互いのふりをするんだ

双子なだけあって
お互いのことが手に取る様に分かる

今日も翡翠の様な綺麗な緑色の髪を揺らして遊ぶ

この日々がいつまでも続くと思っていた
あの日までは…

両親が亡くなったらしい
曖昧なのは、まだ子供だからと
立ち会わせてはもらえなかったからだ

すぐに後継ぎを決めなくてはいけなくなった
優先だったのは兄のダイドだった
大人たちも弟のライトより兄のダイドの方が
扱いやすいと考えたのだろう
ライトは養子に出されることになった

弟のライトが養子に出される前日
最後の日くらい兄弟一緒に寝ることにした

ダイドはただ
「ごめん、ごめんな、ライト
    お前を守れなくて、こんな兄でごめんな」
とライトに謝った
「大丈夫、大丈夫だよダイド
   僕、絶対ダイドのところに戻って来るから」
「「約束」」

あれから長い月日が経ち
ダイドの前に1人の男が現れる
男は綺麗な緑色の髪をしていた
男の名は“ネフ”といった

ダイドはすぐにネフを気に入り
自分の召使なって欲しい
といった

ネフは少し謙遜をしたが
主人の願いということもあり
受け入れることにした

大人たちが1人また1人と辞めていく
そして、屋敷に残ったのはダイドとネフのみ

ダイドは
「やっと2人きりになったな、ネフ…いや、ライト」
といった
続けて
「あぁ、やっと帰って来れたよ、ダイド」
とネフ改めライトが言う

「まさか、こんなにも上手くいくとはね」
「あぁ、そうだな、まさか養子に出る前日に
     入れ替わってるなんて思わないだろうね」
「でも、これで逆さまだった立場も名前も元通りだね」

「「誰にも僕らの絆は裂けさせない」」
そういって2人で笑い合った

2人ぼっちの屋敷に笑い声が響く


参考資料
翡翠…ジェダイド(硬玉)
翡翠によく似た鉱石…ネフライト(軟玉)

12/5/2024, 11:24:57 AM

【眠れないほど】
眠れないほど
君に恋してしまった

きっかけは
本当、些細なこと
落とし物を拾った
ただそれだけ

それだけで
君に恋してしまった
一目惚れだった

ベッドに入った後も
頭の中には
君の顔が浮かぶんだ

明日、君に会えたら
また、話しかけられるだろうか

そんなことを思いながら
ベッドに潜る

まだ眠ることはできないけど
君に会えることを願って
瞼を閉じる

12/4/2024, 11:44:00 AM

【夢と現実】
夢は沢山あった

お金持ちになりたい
有名になりたい
何か大きなことを成し遂げてみたい
好きなものを好きなだけ食べたい

夢の中では何もかもが思い通りだ
ずっと夢の中にいたいと思ったこともある
だって、ここにいる間は
辛く苦しい現実を見ないで済むから

“このまま永遠に目が覚めなければ良いのに”
何度も何度もそう願った

でも、“そんなのは駄目だ”とばかりに
夢は覚め、現実に引き戻される

今日も朝が来る
学校も会社も行くのが憂鬱だ
それでも、行かなければいけない
今日という一日を生きていかなければいけない

いっそのこと、夢など持たなければ
今という現実を受け入れられるだろうか

いや、そうなれば
きっと心を守る最後の砦も無くなって
心が壊れてしまうだろう

夢は残酷で現実は生き地獄だけど
この世に生まれ落ちたその時から
この世を去るその時まで
この日々をきっと繰り返すのだろう

12/3/2024, 12:15:56 PM

【さようならは言わないで】
最近、話さなくなった子が居た

昔は暗くなるまで遊んだり
お互いの家に行ったりしていたのに

特に喧嘩をしたとかではなく
ただ、年齢が上がるにつれて
なんとなく話すことがなくなっていた

今日も特にこれといったこともなく
一日が終わろうとしていた

あいつに話しかけられるまでは

「なぁ、ちょっと付き合ってもらっていいか?」
「えっ…良いけど…」
「ありがとう」

まさか、あいつから話しかけて来るなんて…

久しぶりにあいつと話し合った
話したことは本当に他愛いもないことだったが
久しぶりにあいつと話し合えて嬉しかった

「それで、どうしたんだ?
        いきなり付き合って欲しいなんて」
「あぁ、実はさ、俺、引っ越すんだ
      だから、お前と同じ中学には行けない」
「…そう、なんだ」
「うん、だからさ、引っ越す前に
  お前と、仲直りって訳じゃないけど…
   お前とは良く遊んでたし、話しておきたくて」
「そっ…か」
「それだけ、ありがとうな、付き合ってくれて」

“このままじゃいけない”そんな気がして咄嗟に

「あの!」
「な、なんだ?」
「あのさ、俺、お前と同じ高校行く!
 俺、馬鹿だから難しいかもしれないけど
 中学で勉強めっちゃ頑張って
            お前と同じ高校行くから」
「‼︎…あぁ、待ってる、だから絶対来いよ!」
「あぁ!絶対行ってやるから待ってろよ!」

そして、あいつが引っ越す日になった

“さようなら”とは声に出せずにいた
「さようならは言わない、またな」
「あぁ、またな」

最後に笑ったあいつの顔が輝いて見えた


後日談
それから俺はあいつに宣言した通り勉強を頑張った
そして、あいつのいるだろう高校に入学した

“あいつはどこにいるのだろう”
そんなことを思いながら廊下を歩く

すれ違った瞬間気付いた
あいつは‼︎見間違うはずない、あれはあいつだ!
「「あの!」」

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