【さようならは言わないで】
最近、話さなくなった子が居た
昔は暗くなるまで遊んだり
お互いの家に行ったりしていたのに
特に喧嘩をしたとかではなく
ただ、年齢が上がるにつれて
なんとなく話すことがなくなっていた
今日も特にこれといったこともなく
一日が終わろうとしていた
あいつに話しかけられるまでは
「なぁ、ちょっと付き合ってもらっていいか?」
「えっ…良いけど…」
「ありがとう」
まさか、あいつから話しかけて来るなんて…
久しぶりにあいつと話し合った
話したことは本当に他愛いもないことだったが
久しぶりにあいつと話し合えて嬉しかった
「それで、どうしたんだ?
いきなり付き合って欲しいなんて」
「あぁ、実はさ、俺、引っ越すんだ
だから、お前と同じ中学には行けない」
「…そう、なんだ」
「うん、だからさ、引っ越す前に
お前と、仲直りって訳じゃないけど…
お前とは良く遊んでたし、話しておきたくて」
「そっ…か」
「それだけ、ありがとうな、付き合ってくれて」
“このままじゃいけない”そんな気がして咄嗟に
「あの!」
「な、なんだ?」
「あのさ、俺、お前と同じ高校行く!
俺、馬鹿だから難しいかもしれないけど
中学で勉強めっちゃ頑張って
お前と同じ高校行くから」
「‼︎…あぁ、待ってる、だから絶対来いよ!」
「あぁ!絶対行ってやるから待ってろよ!」
そして、あいつが引っ越す日になった
“さようなら”とは声に出せずにいた
「さようならは言わない、またな」
「あぁ、またな」
最後に笑ったあいつの顔が輝いて見えた
後日談
それから俺はあいつに宣言した通り勉強を頑張った
そして、あいつのいるだろう高校に入学した
“あいつはどこにいるのだろう”
そんなことを思いながら廊下を歩く
すれ違った瞬間気付いた
あいつは‼︎見間違うはずない、あれはあいつだ!
「「あの!」」
12/3/2024, 12:15:56 PM