シン

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1/18/2025, 1:11:20 PM

【手のひらの宇宙】
この手のひらの中には
いつも宇宙が広がっていた

想像の世界で
僕の手から生まれていく
とても小さくて
でも、どこまでも果てしなく無限に続いていた
そんな宇宙が

いつか忘れてしまう日が来るのかな
いつの日か“あり得ない”“馬鹿馬鹿しい”と
大人になってしまう日が来るのかな

もし、自分を見失ってしまったら思い出してみて
あの頃の君は周りの目なんて気にもせず
伸び伸びとしていたんだよって
こんなに自由だったんだよって

今は責任が付き纏って
前の様に自由に出来ることは減ってしまったけど
こうだったら良いな、ああだったら良いのになって
想像することを止める人は誰もいない
そう、誰もいないんだ、君自身以外はね

大丈夫、あの頃の宇宙は今も
君の手のひらの中に広がっているよ

だから、たまには思い出してみて
その手のひらの中に広がっている宇宙を

1/16/2025, 12:59:31 PM

【透明な涙】
私は空っぽな人間だ
私には周りの人達の感情が分からなかった
理解出来なかったのだ
そんな私は、まるで心をどこかに
落として来てしまった様だった

そんな私にも話し相手になってくれる人がいた
彼が一方的に話し私は聞くだけだった
彼の話すことは理解出来なかったが
それで良いと思った

でも、ある時を境に彼が来なくなった
飽きられてしまったかなとも思ったけど
待つことには慣れている

ある日、男数名が私のもとへ来た
男のひとりが
「ちゃんと土産も用意したんだぜ」
と私の前にナニカを投げた
それは人のかたちをしたナニカだった
でも私には分かってしまった
分かりたくなかった
だって、その人のかたちをしたナニカは
見るも無惨な姿をした彼だったのだから

私の反応を見るや否や男たちは去って行く
私は彼に近づく
そして、視界が滲んでいることに気づいた
『これ、は…涙?』
頭が酷く痛む
前にもこんなことがあった様な…

そして、全て、思い出してしまった
自分が人間ではなくアンドロイドだということ
しかもただのアンドロイドではなく
心を感情を持って生まれたアンドロイドだということ
彼に恋心を抱いていたということ
上の者がそれをよく思っていなかったこと
記憶を消されたこと

私は自分の無力さを嘆いた
昔も今も、透明だった私を見つけてくれた彼は
私のせいで亡くなった
『ごめん、なさい…約束、守れなかった』

“「どんなに記憶がなくなっても君を守るよ」
 『私も、記憶がなくなろうとあなたを守るわ』
 「じゃあ、約束」
 『えぇ、約束』              ”

きっと、また記憶を消されるだろう
上の者にとってはアンドロイドは
兵器でしかないのだから
それでも良い、いくら記憶が消されようと
彼のもとへ行けるなら
部品の2、3個壊れようが構わない

今度こそ、彼に会って約束を果たすんだ
そのためならこの世界が壊れてしまっても良い
だって、私はあなたが好きだから

1/15/2025, 11:10:35 AM

【あなたのもとへ】
今すぐ、あなたのもとへ行って
抱きしめさせて欲しい

こんな時代だから
まだまだ、制限される時代だから
君に会うことも触れることも出来ない

写真の中では君も満開の笑顔なのに
実際にその笑顔を見ることも出来ない

あぁ、今すぐにでもあなたのもとへ行けたなら
僕の出来ることを精一杯やって君を笑顔に出来るのに

分かってる、今は我慢する時なんだって
分かってる、分かってはいるけど
それでも、君に会いたい、会いたいよ

せめて、この心だけでもあなたのもとへ

1/14/2025, 12:08:11 PM

【そっと】
そっと、君に触れる
君はその小さな手を目一杯伸ばして
僕たちに笑いかける

その小さく優しい微笑みをする君に
僕たちも微笑み返す

この温かく天使のような…
でもしっかりとした重みを感じる、我が子

自分が本当に“パパ”になったのだと
告げられている様だ

実際、この手で触れるその時まで
自分が“パパ”になったという実感がなかった

でも、今なら分かる
僕は今、この瞬間、小さな君のパパになったのだ

きっと、この先、沢山の苦労と沢山の思い出を
紡ぎ上げていくのだろう

それでも、君のママと小さな君を守って行くと誓おう
だから、安心して大きくなってね

1/13/2025, 12:29:08 PM

【まだ見ぬ景色】
私はこの春、上京する
別にこの町が嫌いな訳ではない
むしろ、この町の人たち、風景は大好きだ

町の人たちは優しいし誇れるものは沢山ある
でも…いや、だからこそ私はこの町を出て
外の世界を知らなければならない

まだ見ぬ景色、まだ会わぬ人々
まだまだ、私の知らないことが沢山ある

外の世界を知り、学び、経験して
いつかまた、この町へ帰って来られる様に

大きな期待と少しばかりの不安を抱え
さぁ、見に行こう
まだ見ぬ景色へ
会いに行こう
まだ会わぬ人々へ

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