「止まない雨はない」と、昔君は僕に言ったね。
あの時は反発して自分の殻に閉じこもったけれど、雨が止み虹が出るように時間が僕の問題を解決してくれた。
それが僕の思春期が通り過ぎた瞬間だった。
今思い出すと恥ずかしいくらいの黒歴史だけど、君の言葉を何度も心の中で反芻して、雨が止むのを待ったあの時は人生でとても大事な時間だった。
あの時の言葉を今度は君に伝えたい。
辛くて、苦しくて、自分を責めただろう。突然の愛する人とのお別れは自分を自分でなくしてしまう。
僕はその経験は体感できないけど、君のその悲しむ姿を見ると解るよ。
最愛の人と一緒に眠りにつきたいと言った君のあの取り乱した様子を目にしたら、何も言えなくなってしまう。
「止まない雨はない」
この言葉だけじゃ、暴力的だ。君の心の痛みを引き摺り出して綺麗に纏めたように捉えられてしまう。あの時の僕がそう捉えたように。
そうではなく、君にかける言葉はこれだ。
「君に生きていてほしい」
そう、君にただ生きていてほしいんだ。だってーー降り止まない雨はないんだから。
#降り止まない雨
あの頃の景色が今の景色を形作ってる。
それを忘れないで。
#あの頃の私へ
『受容のとき』
「好きだよ」
熱のこもった告白
緊張を隠した楽しいデート
それが当たり前になる頃
あなたの気持ちは
手のひらを返すよう
ひらひら
蝶のように花をわたり
ふわふわ
綿毛のように消えてゆく
変わらないものはないよと
開き直られて
それでも私は
あなたのことが好きで
好きで
消えそうなくらいつらい
あなたへの気持ちは変わらないと
伝えたいけど
でもね
私の心 変わってしまう予感
ひどい言葉
ひどい仕打ち
変わるまいと頑なの心は
いつのまにかひびが入って
そうだねあなたの言うことは
どうやら正解なのかも
失恋という
悔しさと
すがすがしさが
心に少しずつ沁みわたった
#変わらないものはない
『どんなクリスマスでも』
今日はクリスマスという日らしい。
僕の家族が話していたのを聞いた。
夕飯に少しだけチキンが乗っていてラッキーだったけど、クリスマスという日のおかげかしら。
大好きな散歩は雪が積もりだしたからという理由で短めだった。
子供達が寝て、リビングでパパさんとママさんが晩酌している。見られていないテレビの番組はバラエティからいつのまにかニュースに変わっている。
「今日は…というのに、…ではまた爆撃が…」
「子供食堂では、サンタに扮した…」
「…広場ではクリスマスに平和を願って…」
世界中でクリスマスを祝ってるみたいだけどそれでも今日という日に人間は争いをしている。
不思議だなぁ。
僕達が争うのは食べ物や縄張りが多いんだけど、人間もそうなのかな?
だとしたら、僕らと同じ本能だから争いはなくならないかも。
お腹いっぱいなら、ご飯を分けてあげれるけど空腹ならそんなことできないもんね。
そんなことを思いつつ僕は残しておいたチキンの骨をしゃぶった。
パパさんとママさんはいつの間にか寄り添って船を漕いでる。
こういうのが平和ってことなのかなぁ。
みんながご飯を食べれなくて苦しんでたとしても、僕はパパさんやママさんみたいにみんな幸せでいてほしい。
今日はクリスマスだから。
僕がもらってる幸せをみんなに分けてあげる。
世界中、どんなクリスマスでも、誰しもが安らげますように。
僕は鼻を地面に擦り付けて願った。
#クリスマスの過ごし方
『美味しいご馳走』
イブの夜に君は何を食べたいの?
そう聞かれたから
なんだと思う?と答えた
骨付きチキン
いいえちがうわ
ケーキ
そんなんじゃない
じゃあ焼肉?
うーんちょっと違う
お寿司
それも違う
じゃあ何を食べたいの?教えて
そう言われたので答えを教えた
そしたらあなたは蒼白な顔で後退りした
私は笑みを深めた。
さあて、私の今日の夕食はなんだったでしょう?
ふふっ私最近おかしいの
楽しくて楽しくてたまらないのよ
永遠にあなたと生きていけるの
愛おしいわ
窓の外は真っ暗闇
雪がちらつくのが見える
ねえ、きれいな晩ね
あなたの頭を撫でて
語りかける
頬にも手にもあなたの紅
すべて無駄にしないように
しっかり最後まで味わって
あなたの愛を噛み締める
イブでもどんな夜でもいいわ
あなたと一緒なら
#イブの夜