ゆずき

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8/6/2024, 12:27:35 AM

【鐘の音】

午前8時15分
平和を願い鳴らされる鐘の音
今年もTV中継を見ながら黙祷を捧げる
世界が平和になりますようにーー。

7/29/2024, 8:58:57 AM

【お祭り】

夕方でもじっとりと汗ばむ背中に
不快感を募らせながら、新しく買った浴衣に袖を通す。
少し大人っぽい柄を選んだが彼は喜んでくれるだろうか。
髪を整え、メイクをし待ち合わせ場所に向かう。

近所のお祭りに行くだけなのに
こんなにもワクワクするのは、何年ぶりだろう。
彼氏ができて初めて行くお祭りというのもあって、
少し浮かれているのかもしれない。

待ち合わせ場所に着くと彼はスマホを
いじりながらたまに周りを見渡していた。
人混みが凄くて彼になかなか近づけない。
誰かと肩がぶつかりよろけそうになる。

あまりの人の多さにため息をつくと
ふと、近くに来ていた彼と目が合い
私の手を引いて人が少ない端の方に誘導してくれた。

「ごめんね。遅くなって」

「いや、俺もさっき着いたばかりだったから大丈夫
それよりもさっきは大丈夫?怪我とかしてない?」

「よろけただけだったし、肩もそんなに痛くないから大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」

「それならよかった。あの…浴衣姿、凄く可愛いね。
キミによく似合ってる」

照れ笑いしながら言う彼に私も恥ずかしくなって、
小さい声で「ありがとう」しか言えなかったけど
浴衣姿を彼に喜んでもらえてとても嬉しかった。

「じゃあ、遅くなったけどお祭り会場に行こうか」

そう言って手を差し出す彼はいつもよりキラキラしていて
まるでお伽話にでてくる王子様みたいにカッコよかった。

7/27/2024, 3:36:38 PM

【神様が舞い降りてきて、こう言った。】

神社にお参りに行った日の夜。
夢の中に神様が舞い降りてきて、こう言った。

『お主は、ほんに幼い頃から変わらぬのぅ。
成人を迎えた祝いじゃ。これを受け取れ』

懐から紅色の手鏡を取り出し私に手渡す。

『この手鏡を肌身離さず持ち歩け。
お主を悪きモノから守ってくれるだろう。』

神様が去っていき、ふと目覚めるとすでに朝だった。
そういえば貰った手鏡は……
周りを見渡すとスマホの横に
夢に出てきた手鏡が置いてあった。
紅色の手鏡で後ろに桜の花が描かれている。

夢じゃなかったんだ……
この手鏡を肌身離さず持ち歩くんだよね?
とりあえず忘れないうちに鞄に入れとこう。

◆◆◆◆◆◆

こうして、手鏡を持ち歩いて1ヶ月。
特に変わった事も無いまま、日常を過ごしてきて
私も気が緩んでいたのかもしれない。

会社の帰り道にまさかあんな目に遭うなんて
今の私には知る由もなかった。


7/26/2024, 12:54:10 PM

【誰かのためになるならば】

「今、この瞬間も苦しんでいる誰かのためになるならば
私は喜んでこの身を神に捧げましょう」

微笑んだまま口上を述べそのまま湖に身を投げる。
それが産まれた時から定められている私の運命。

聖女の証が額に現れ神の信託を授かった私は、
神殿で聖女となるべく教育を受けた。

本当は私だって同世代の子と外で遊んだり、
お喋りをしたりしてみたかった。

でも、生まれながらに聖女として育てられた私には
自由などなく、聖力を高めるために禊や祈りに励む毎日。

私は一体、何のために産まれてきたのだろう。
この国を豊かにし、貧窮している民を救うため?
それとも、民の間で流行っている病を無くすため?

私、1人の犠牲で一体何人の民が助かると言うのだろうか。

『誰かのためになるならば』
なんて私にとっては呪いの言葉でしかないのにーー。

7/25/2024, 9:23:40 AM

【友情】

「裕也〜お前、彼女と別れたんだって〜?」

教室の机に突っ伏しながら、スマホを眺めていた俺に
ニヤニヤしながら近づいてくるのは幼馴染の涼介。
学校一のモテ男だ。

「……何でお前がそんな事知ってんだよ」

「え?そんなん、お前の元カノがお前と別れたーって
言いながら俺に擦り寄ってきたからだけど⁇」

「 はぁーー……またこのパターンか……」

スマホから目を離し、机に突っ伏す。

俺と涼介が幼馴染だと知った女子が、
俺を踏み台にして涼介に近付こうとする。
昔から繰り返えされてきた、
このパターンにいい加減俺も慣れきっていた。

最初は俺を見てくれる女子も、
涼介に会わせると人が変わったように本性を表す。
俺にはつくづく運がないのかもしれない。

「まー災難だったなとしか言えないけど、
これでまた一緒に帰れるんだろ?帰りにゲーセン寄らね??」

突っ伏した俺の頭を突きながら笑うコイツは、
俺が彼女と別れると毎回こうして慰めにくる。

涼介の笑顔を見ると何だか全部馬鹿馬鹿しく思えて
「しょうがねーな」なんて、
俺も笑いながら涼介に応えた。

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