【もしもタイムマシンがあったなら】
「〇〇くんなんて、もう知らない!」
こう言って〇〇が家を飛び出して半日。
流石に帰ってくるのが遅いと心配になり
LINEをしたが繋がらず、電話にも出ない。
〇〇を探しに、行きそうな場所を手当たり次第に
見て回ったが〇〇は居なかった。
〇〇が帰って来ない事を不安に思いながら、
眠りについた午前3時。
ついにスマホが鳴った。
「〇〇?今、何処に居るんだ!? 俺が悪かった。
迎えに行くから場所を……」
「すみません。〇〇さんのお宅でしょうか。」
「……はい、そうですけど。あなたは……」
「〇〇病院の〇〇と申します。〇〇さんは午前2時頃に
事故に遭われまして、今〇〇病院に搬送されています。」
「……は?」
「一刻を争う事態ですので、
〇〇病院までお越し頂きたくご連絡致しました。」
「……分かりました。〇〇は無事……なんですよね?」
「今、処置室にいらっしゃるので……
とりあえず、お早めにお越しください」
スマホを持つ手が震える。
しっかり者の〇〇が事故に遭っただなんて
信じられないが、行くしかない。
不安に押しつぶされそうになりながら、
〇〇病院まで急いで車を走らせた。
◆◆◆◆◆◆◆
「〇〇‼︎」
病室のドアを開けると〇〇は人工呼吸器に繋がれ、
静かに目を閉じていた。
「〇〇ごめん、ごめんな。俺が、俺があんな事言わなかったらお前は事故に遭わなかったかもしれないのに……
本当に、ごめん」
涙を流しながら〇〇の両手を握りしめ
懺悔する様にその場で赦しを請う。
いくら後悔しても〇〇が起きるわけじゃない。
それは一番、俺が分かってる。
あぁ、神様。
もしもタイムマシンがあったなら
〇〇が事故に遭う前日に時を戻してください。
もう、〇〇と些細なことで喧嘩なんかしないし、
今度こそ〇〇を大切にします。
ーーだから、どうか〇〇の目を覚ましてください。
【今一番欲しいもの】
キラキラ綺麗な宝石
ふんわりとしたレースをたくさん使ったドレス
甘くて美味しい紅茶とケーキ
美しい薔薇が咲き誇る庭園
嘗て私が過ごした城は、
今は見る影も無く焼け落ち一部が
灰となり崩れ落ちている。
クーデターに巻き込まれ
民に優しく賢王とまで言われていた
お父様とお母様が処刑され、
幼い私は使用人達に隙をみて国外に連れ出された。
見つからない様に各国を転々とし、
18歳になった今、また故郷に戻ってきた。
両親が統治していた頃よりも貧民街に人は溢れ、
貴族街は肥えた貴族が馬車で行き来する。
貧窮した人々が生きる気力を無くし、
明日の食べ物にもありつけない様な酷い有様だった。
ああ、この世に神がいるのなら
どうか私に貧窮した民を救う力をお与えください。
美しい国だったこの土地を穢した者共に、凄惨な罰を!
私が今一番欲しいものは両親を殺した者共の
凄惨な死のみでございます。
【私の名前】
前に、何処かで聞いた事がある。
「名前」というのは親が我が子の幸せを願い、
一番最初に贈るプレゼントらしい。
私の名前は祖父から一字、母から一字貰った。
私の名前を見れば一目で、
親が名前に込めた願いや想いを感じる事ができる。
私は、自分の名前が大好きだ。
込められた願い通りの人生を歩めているかは
分からないけど、今日も幸せを感じながら生きている。
【視線の先には】
私の視線の先にはいつも貴方がいたけど、
貴方の視線の先に居たのはあの子だった。
いつも貴方を見ていたから分かる。
貴方は私を見てくれないんだって事は。
いつも柔らかい笑みを浮かべて話す貴方は、
あの子といる時だけ愛おしそうにあの子を見つめるの。
私もあの子みたいに貴方の隣に居たかったし、
愛おしそうに見つめてほしかった。
貴方とあの子が付き合ってるのは周知の事実で、
私が勝手に貴方に惹かれているだけ。
貴方があの子と笑い合うたびに、
心が張り裂けそうになるのを知らないふりをして耐える。
叶わない恋なんてするものじゃないなーー。
なんて思いながら今日も私は、
あの子の友達のフリをする。
【私だけ】
私だけって言うとネガティブな印象になりがちだけど、
貴方には「私だけを見ていてほしい」って思うのは、
私の我儘なのかな。