ゆずき

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【お祭り】

夕方でもじっとりと汗ばむ背中に
不快感を募らせながら、新しく買った浴衣に袖を通す。
少し大人っぽい柄を選んだが彼は喜んでくれるだろうか。
髪を整え、メイクをし待ち合わせ場所に向かう。

近所のお祭りに行くだけなのに
こんなにもワクワクするのは、何年ぶりだろう。
彼氏ができて初めて行くお祭りというのもあって、
少し浮かれているのかもしれない。

待ち合わせ場所に着くと彼はスマホを
いじりながらたまに周りを見渡していた。
人混みが凄くて彼になかなか近づけない。
誰かと肩がぶつかりよろけそうになる。

あまりの人の多さにため息をつくと
ふと、近くに来ていた彼と目が合い
私の手を引いて人が少ない端の方に誘導してくれた。

「ごめんね。遅くなって」

「いや、俺もさっき着いたばかりだったから大丈夫
それよりもさっきは大丈夫?怪我とかしてない?」

「よろけただけだったし、肩もそんなに痛くないから大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」

「それならよかった。あの…浴衣姿、凄く可愛いね。
キミによく似合ってる」

照れ笑いしながら言う彼に私も恥ずかしくなって、
小さい声で「ありがとう」しか言えなかったけど
浴衣姿を彼に喜んでもらえてとても嬉しかった。

「じゃあ、遅くなったけどお祭り会場に行こうか」

そう言って手を差し出す彼はいつもよりキラキラしていて
まるでお伽話にでてくる王子様みたいにカッコよかった。

7/29/2024, 8:58:57 AM