音茶

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1/4/2024, 2:05:38 PM

お題 『幸せとは』


「幸せってなんだろう」
なにか深く考えて出た言葉ではない。こたつでみかん食べて、ふと思ったことを口にしただけだった。
「あなたは今幸せかい?」
叔母さんがそんなことを聞いてきた。
「多分?わかんないけど。不満はないよ。」
別に華々しい生活はしてないが、幸せだと感じることはできている。
「そう感じるならあなたにとっての幸せはそれなんだろうねぇ。幸せ、そう感じたらそれがその人の幸せなのさ。」
うーん、なるほど。納得できるようなできないような…。
「じゃあさ、例えば宗教で洗脳されて、周りの人を殺害してる…でもそれは自分の信条に従ってるから幸せだって感じてる人も、幸せってこと?」
叔母さんは困ったように少し考えた。
「うーん、そうだねぇ、その人にとっては幸せかもしれないが、それは幸せと認めてはいけないだろうね。他人の幸せを奪ってるんだから、社会的に幸せと認めてはいけない範疇にあるってことだよ。」
「そうなんだ…。……あ、そういえばさ、…」
難しい会話をこれ以上続けたくなくて、私は話題を変えた。

11/13/2023, 10:49:35 AM

お題『また会いましょう』

景色が灰色一色の荒廃した世界で、君とたった二人きり。
君の命は後少し。そんなこと医療知識のない僕にもわかっている。
「最後まで君を看取りたい。そして、僕も一緒に。」
こんな世界で二人きり、このあと一人で生きたって希望すらない。いつか死に絶える命だ。二人でなら少しは希望が見えたが、人類はきっと滅亡した。だって彼女と世界を回ったって一人として人を見つけられなかった。だから、一緒にここで死ぬのが一番いいんだと思う。でも彼女はこういった。
「ううん、私はここで『待ってる』。あなたが他の人を見つけたらまた会いにきて。」
僕はその言葉を受とり、立ち上がる。そして振り向かず声をかけた。
「また会いましょう。」
返事はなかった。でも、僕が振り向かない限り、彼女はずっと生きてきいる。シュレディンガーの猫とでもいうべきか。僕の他に生きてる人がいる…そう思うと心があたたかくなった。
「また会いましょう」、これは呪いの言葉かそれとも希望の言葉か…。
その答えはあるき出した先にある。
僕は一歩踏み出した。

8/3/2023, 12:48:58 AM

お題 『病室』


どんどん症状が良くなって明るい病室もあれば、病状が悪くなって暗い病室もある。
数週間前動けた人が、点滴の管や胃の管など入って
動けなくなっていく。

動けなくておむつ替えられたり栄養入れられたり、身体拭かれたり、あっち向いたりこっち向いたり身体の向きを変えられて、苦しい痰の吸引させられて。意識はなくて、言葉を発することもなくて。ただケアをされる。
意識はなくとも、看護師として声掛けしながらケアは行う。苦しそうな痰の吸引も、「すみません、もう少しですからね」て、一日に何回も。
この状態で回復の見込みもない。これは患者さん本人の幸せだと言えるのだろうか。

でも、ケアをするのが仕事だから。今日も病棟に行って看護をする。少しでも明るい病室が増えますように、祈りながら。

7/31/2023, 11:04:52 AM

お題 「だから、1人でいたい」


まだ20代なのに、年を取れば取るほど人とあまりかかわりたくないと思ってしまう。
だって、
私は、自分のこと美人だと思ってるのに、そのことを気を使って言えない。
私は、太れない体質だけど、褒められるたびにそんなこと口が裂けても言えない。
私は、スタイルがとてもいいけれどストレッチも何もしてないから天性の物。
私は、SNSや承認欲求ほどめんどくさくて自分に不向きなものはないと思ってる。自分で自分を承認してるから。

ポジティブなことが自慢に聞こえるものばかりで言えたものではない。
ネガティブなことは共感の声が上がるのに、ポジティブだと叩かれるような気がする。ナルシストだと言われてる気がする。
ポジティブな悩み、これを理解してくれる人は中々いないのではないか。
だから、1人でいたい。

7/28/2023, 11:44:41 PM

お題『お祭り』


「これください。」
「へいよ。お嬢ちゃん。」
お金を払うと、わたあめを渡してくれた。
「きれいな浴衣だね。さてはデートだな?」
にやりとおじちゃんが笑う。その顔に悪意はないが、心にチクっとささるものがあった。
「あはは、1人なんです。」
貼り付けた笑顔と取ってつけたような明るい声で言ってのける。するとバツが悪そうに「すまねぇな。」と言われた。別に構いやしない。夏祭りに、高校生が1人で来るなんて珍しいだろうから。

「ねぇ聞いて!今日はね念願の夏祭り!ヨーヨーを買ってきたんだけど…ほら、この模様とっても綺麗でしょ?あとね、金魚すくい…で…えと、何匹取ったかな。いち、に……さん……ううん、きっとあなたがいたらもっと取れただろうに。すぐに網が破れてだめだった。私、ほんと不器用だよね。器用なあなたが羨ましいよ。…………あっ、射的もやったよ!いっっ発も当たらなかった!去年はあなたがほしい景品を取ってくれてたっけ。あれってコツが居るの?てか結構重くない?支えるのだけで精一杯だったんだけど。あれ、もしかして軟弱だっていってる?ひどぉい!………あっ、これも買ってきたの、じゃがバターに、綿あめに、焼きそば、たこ焼き、りんご飴!これぜんぶ私が食べるためなんだからあげないよ。太るって?デリカシーないなぁ。夏祭りくらいたくさん食べたいの!!…ちなみにさ、浴衣姿になにか言うことないわけ?可愛いとかさぁ……」
私はお墓の前で、これ以上ないくらいはしゃいで騒ぎ立ててみる。返答はもちろんないし、周りに人もなく静まりかえっている。

5分くらい続けたが、バカバカしくなって口を閉ざした。散っていく花火を見ながら、今は甘すぎる綿あめを口に入れた。花火がぼやけていく。暖かいものが頬を伝う。
「帰ろ………何やってるんだろ。」
墓に背を向けた。その瞬間、
『浴衣姿、すごく似合ってるね。今年もお祭り楽しかった。ありがとう。』
声が聞こえた気がして振り返った。誰もいないし何も変わらない。気のせいかもしれない。
でももう少し一緒にいることを決め、お墓のそばによって、綿あめを口に入れた。とても甘くて、心が暖かくなった気がした。

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