毎日 日は出ル
私と言う体たらくで無精な人間なぞに
日の出は来ないんじゃなかろうか
それでも心臓が動く限り
私の最初で最期の日の出を待つ
何もこれに限っては
私だけではないだろう
―それこそが、初日の出と言う真の意味ではないかと、
少し憂いて、煩わしい光を閉じた―
同じ光でもブルーライトにご注意を
題「日の出」
塵芥 椎名
【子猫】
その小ささと
その瞳と
その暖かさと
その鳴き声と
その垣間見せる
色々な感情と仕草
誰に似てるんだろう、誰だっけなぁ
「ま、いっか」
そういえば
「吾輩は猫である」の名前の無かった猫は
お酒を呑んで亡くなったんだっけ
――吾輩は死ぬ。死んで此太平を得る。
太平は死ななければ得られぬ。
南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏。有難い、有難い――
と、思って鳴いて溺れたんだっけ
猫目線で書いた夏目先生は猫になれたのかな
若しくは猫だったのかもなぁ
あら、気付けば
強気で弱気な瞳を持ってして、
私の様子見している可愛い子猫さん
見透かすのが上手
空気を読むのが上手
人を喜ばすのが上手
機嫌の塩梅が上手
心を猫じゃらしでくすぐられる様な
心を見透かしてる様な瞳の子猫さん
―何を見ているか何を考えてるのか分からないよね―
人は見える物しか信じないから伝わらないけど
君が見てるものを私は分からないけど、
「私は君のその嗅覚や五感を信じるよ、大丈夫よ」
嗚呼、いつからか、私はこの瞳を持って、
五感を持ってして見事に生きて
「南無阿弥陀仏」
何かに溺れて、きっと、私も、どこかの誰かも、
あの作品の猫の様にいつかは亡くなるんだ
「君は私みたいね、ん? 私が君みたいなのか、
失礼、あはは」
――気付かない振りも上手ね――
猫は返事の代わりに「ニャァオ」と鳴いた
私は応えの代わりに馬鹿みたいに笑った
ワインの瓶を抱えながら
一緒にマタタビ如何?と君を呼ぶ
AM:4:37の日常の中に閃き
何かが開花、否、解禁宣言されたある夜のお話
「にゃりがたい、にゃりがたい、だね、ふふ」
――塵芥――
――忘れよう
私の事は、もう――
――塵芥――
【飛べない翼】
―人間は飛べない
―人間は翼がない
そういや、
エナジィドリンクのCMで
「翼を授ける」なんてフレーズあったな。
翼を授けると謳ったそのドリンクは
量産され模倣された。
今では焼酎と割られている始末。
薬と一緒に飲まれている始末。
「翼なんて授からなかったから」
「もっと勢いつけたいから」
これが人間の特性だ。
強欲傲慢と言うゴミ捨て場に
ネットをかけても
かけても
ネットを突き破り群がる烏合…否、人間の衆。
――そこまで翼が欲しいのか――
「不可解だよ、私にはさ」
カフェインから
市販薬から
処方薬から
ブルーライトから
色んな、余計な、
化学物質を、機械を、謳い文句を、
人間は信じて
小銭からお札まで支払う、支払う、支払う
心も支払う、支払う、支払う
―人間を購買して
―人間を頂戴する
馬鹿らしい。
「そりゃあ、鴉さんも、
アホー!って鳴くよね。あはは。」
漫画にも小説にも出来ない人間連載。
思考停止の脳内お花畑人間満載。
それを称える人間万歳。
宗教はこうして続く。
―「神様」でも「英雄」でもなくて、
「人間」が称えられる―
「ネット」というカラクリに味を占める。
どうやら、ソイツァ
ゴミ捨て場の「ネット」では無いものラシィ。
―目が痛い、ココロが痛い―
指先1本で見知らぬ相手に
「無罪」と言う罰を与え、
指先一本で「神様」及び「教祖」に
暴言を吐く。
―真面に喰らって愚か視野、裏目視野―
井の中の蛙さえ
大海は知らずとも
空の青さは誰よりも知ってるのに。
―あぁ、鴉は空を知ってる。
―そして、蛙は空に憧れる。
―そんな、鴉は大海さえ知ってる。
―だから、蛙は大海に憧れる。
――人間は全てを知りたがる――
「そんで、得意ガオするんだろ?」
―オシエテあげよう、トクベツに、ナイショだよ?―
お得意の秘密の御呪いを。
飛べる翼なんて
この身体一つ、
この心一つの持ちようなのサ。
ある群れからはぐれた少女が居たのサ。
奴はブランコに乗りたくて公園まで走ッタ。
喜びとも悲しみとも言えない
大切な感情だけ、抱いて、
私はあの時確かに走った。
「そうだったね、今想うと可笑しいよね、ふふっ」
その瞬間、羽が生えるんだよ。
嬉しそうに笑って飛ぶ奴を確かに見たんダ。
―信じるは八咫烏、信じないは十戒だっけ?―
とにかく、心で飛ぶんだ。
身体の細胞が弾けるんだってサァ。
―子どもの頃は羽が生えると信じてたかい?
―子ども達は羽がある事を知ってるかい?
―大人になると見えなくなるらしいナァ?
「不思議だね」
「マァ、ものはタメシようダ」
――いつかの女性が作った「幸福論」には、
(エナジィを燃やすだけなんです!) って書き記され、
アスファルトに寝転ぶ少女には羽があったな――
そう、その感覚を持って
家の部屋から、玄関から飛び出して!
高らかに飛んでみナ!
――本当の翼が欲しいなら――
「見ててヤルよ、お前の飛びカタを」
――墜落にご注意を――
「上手く飛べるといいね」
私は滑り台の上から
翼の授かり方を、御呪いを、
今、まさに、遂行しようとする、人間を見て微笑む。
「アイツはどうだろうナァ」
烏合の衆からはぐれた、鋭い目付きの、鴉さんと。
――願う、望む、祈る――
「……アぁ!」
鴉が鳴いた。
私も泣いた。
――塵芥――
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※墜落したか、飛べた喜びかは、最後まで読んでくれた
貴方に委ねます。読んでくれて感謝。
どうか、どうか、貴方にとって、素晴らしい一日をを過ごして下さいませ。
ご自身の文章で、飛べ。
【ススキ】
「ねぇ、ススキにもね花言葉があるの知ってる?」
ベッドの横で無邪気に笑いながら
問い掛ける貴方。
「知らないよ。」
煙草の紫煙と
コーヒーカップからの湯気が
二人を思考させる材料には充分であった。
「そっか、人生損してるよ?」
顔を覗き込んで揶揄う貴方。
「あれ、あれは知ってる。実るほど頭を垂れる稲穂かな。ってやつ。」
「あはは。ススキと稲穂は違うんだよ。」
笑う貴方。
二人の時間はその「ススキ」と言う物の
話題だけで充分に笑い合えた。
今更、分かる、自分の、愚かさ、無知さ。
「ススキの花言葉、知ってるよ。「活力」「生命力」「精力」「なびく心」「憂い」「心が通じる」「悔いのない青春」「隠退(いんたい)」なんだってね」
私が発した小部屋の独り言だった。
―貴方は何を私に汲み取って欲しかったんだろう―
自分の事か
私の事か
誰かの事か
二人の事か。
二人の「ススキ」の様な日々は
とうに、とうに、
二人で月を見た日に消えたのに。
何で思い出すんだろう。
今更。
―無知とは唯一の善は知識であり、唯一の悪は無知である―
「実るほど頭を垂れる稲穂かな……」と、
ポツリと吐き捨て
笑った。
実るほど謙虚にならなきゃいけなかった。
実ったから私は傲慢に「もっと」を強いた。
沢山実ってしまったから、だから、
頭を垂れるよりも早く、折れてしまった。
(あはは。ススキと稲穂は違うんだよ?)
月を見た。
あの日の事は月の神様が下した
当たり前の裁定だったんだろう。
「見分けも付かなかった私を赦してよ」
そう、笑って、泣いた。
コーヒーカップは割れていた。
月が欠けるように。
星が沢山散りばめられてるように
破片が落ちていた。
――塵芥――
【脳裏】
・脳裏・脳裡
(意味)
脳中。頭のなか。
「―にひらめく」
ふと、理解してる筈の言葉の意味を調べる時がある。
脳裏ってさ
「脳」の「裏」って組み合わせて
「脳裏」って何か変だな。
そもそも、脳の裏ってどこだろう?
なんて、思いながら。
そんな僕の脳裏を書けと言われると
「綺麗な思い出」
しかないや。
不幸な思い出さえも
鮮やかになっていて
幸せな思い出は勿論
当時より盛られていて
涙も綺麗で
苦しみも真剣で
逆境も超えて
ぶつかった幾千幾万の
高い壁さえも
ぶち壊せた。
だから、今日も生きている。
だから、僕の脳裏は誰よりも幸せで
今こうしてる瞬間も
僕の脳裏は昨日の記憶を
早々と、
より鮮やかに色を塗っているのだろう。
――そうでないと
人は脆いから生命を維持出来ないんだもの――
其れを知ってて、
色鮮やかに塗ってくれて、
焼き付けてくれて、
五感に刻んでくれてるんだね。
だからね、これからも、
もっと綺麗に焼き付けて
刻んで、上塗りして、
「脳裏」と言う芸術家に、脚本家に、
縋って生きていくんだ。
どうか、どうか、
命尽きるまで
色鮮やかに塗り続けておくれ。
その日が来た時、
僕は君に心から、
「有難う。綺麗だったよ」
って、笑って目を閉じるよ。
僕の脳の裏側さん。
―塵芥―