罠話

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10/10/2024, 2:52:24 PM

大丈夫
大丈夫だから
もういいよ
もういいって
うるさい
ほっといてよ
関わるなよ
もういいから

「良いわけないだろ、そんな顔して言われても説得力皆無だよ」

どうして

「お前が泣いていたから」

「どうして……」
「その理由を聞くまで、俺はここを離れない」
「も……うざいよ……」
「ははっ、悪かったな」

涙の理由(わけ)

10/9/2024, 2:21:54 PM

えんじょーい
音楽はなり続ける
いんじょーい
届けたい胸の鼓動……


「やっぱ盛り上がるならこの曲っしょ!」
友達数名とカラオケに来た
今日は特に記念日という訳でもないが、そういう気分だと一人が言い出し、イツメンの3人が集まった。
「好きだねーその曲」
nobodyknows+のココロオドルを最初に歌うのがこの3人カラオケの定番になっている
今回もまたこの曲が最初であった
「これが一番最初にバチッと盛り上がれんのよ!お前らも合いの手入れろよ〜!」
長いラップパートを歌いながら器用に喋りかけてくる
「器用だなこいつ」
「ほんとにね〜」
歌っていない2人はリズムに乗りながら歌い手を見ている
「そういや、面接落ちたわ」
「えっマジ〜?」
突然なことを言いだした
普段から真面目なタイプに見えるため、嘘ではないようだ
「え、え〜まじかぁ、なんで今??」
「……いや、」
ここで曲がラスサビに入った

えんじょーい
音楽はなり続ける
いんじょーい
届けたい胸の鼓動

「なんか、今なら言える気がして」
「そ〜でっか」
適当に返事をしてドアすぐ横の壁掛け電話の方に歩き出す
かなり長い時間電話をかけ、戻ってきた
「ま、今だけは曲にノって忘れよ〜」
「ん……、そうだな」

ココロオドル

10/8/2024, 2:09:17 PM

嗚呼、忙しい
休む暇もありやしない

社会人として働き始めてからはや12年
とある会社員として地位もそこそこに、安定した生活を送っている
しかし今、私を襲うのは大勢の新人導入をした事による教育係の不足。私もその教育係の1人として今日も駆り出される、だが人数が足りない。
私は東奔西走させられ、毎日元の部署から出張、出張、出張。帰るのはいつも11時を過ぎる

「残業代あるだけマシか……」
そう言い聞かせ今日も夜道を歩く
10月上旬、外はだんだん肌寒くなっている
いつまでこの生活が続くのだろう
教育係だからと言え自分にも仕事は来る、それを捌きながらと言うのだから酷なものだ
自然とため息が出る
……

ふと、目の前に駄菓子屋が見えた
「まだやってたんだ、ここ」
昔、まだ私が幼い頃からあるこの駄菓子屋は、穏やかな老夫婦が営んでいる
「……お菓子、買おうかな」
日々の疲れによるものなのか、無性に何かに縋りたい
駄菓子屋というものはだいたい、夜の8時には閉まるイメージがあったが、今日はまだ開いているようだ
暖簾(のれん)を潜り中に入る
「あら、いらっしゃい、」
小さい頃に見たおばあちゃん、今となってはもう顔がしわくちゃになっている
「こんばんは…、」
軽く会釈を返す。
さすがに覚えているはずもないだろう、子供から大人への変わり方というものは絶大だ、顔も身長も洋服も何もかもが変わっている
何か食べたいものはないか探してみる、すると
「今日はね、本当は8時で閉めるつもりだったんだけど、なんだかね」
突然おばあちゃんが喋り始めた
「なんだか、誰かがお菓子を買いに来るような気がして、開けておいたの」
微笑みながらそう呟いた
「そうしたら、えみちゃんが来たの、開けておいてよかったわ、最近はどう?」
ゆったりとしたテンポでおばあちゃんは話した
えみ、恵美、佐々木恵美。私の事だ
私の名前を呼んだ、呼んで話を続けている
「おばあ、ちゃん、私…私ね、」
懐かしい空気に包まれて涙が出そうだ
今までの苦労が全て浄化されそうだ
子供の頃に戻った様に、好きだったお菓子をカゴいっぱいに入れて、レジにいるおばあちゃんの元へ向かった。
「ねぇ、おばあちゃん、私、お話したいの…」
誰かに話を聞いて欲しい
「ここ、座ってもいい?」
いつかの日も、ここに訪れては今日あったことを話した
あの頃は、楽しかった
あの頃は、悩みなんてなかった
あの頃……のように
「もちろん、お茶も持ってきてあげるから、待っておいてね、お菓子もあげようね」

嗚呼、忙しい、休む暇もありやしない
けれどそんな日々の中
こんな束の間の休息が
私をまた1つ、大人にしてくれる

束の間の休息

10/7/2024, 1:17:17 PM

ある日おばあちゃんに貰ったもの
いつしかタンスの中に入れて忘れていた。

「たしかこの辺に…、あ、あった」
もうそこは、要らないもの置き場になっていたけれど、突然思い出した。
「綺麗…、もう10年は経ってるはずなのに」
いつもお守りにして持ち歩いていた。
学校に行く時も、遊びに行く時も、ご飯を食べる時も、寝る時も、肌身離さず
けれどある日実家のタンスに入れたまま、時が経ち、いつしか忘れていた

「どうやってたっけぇ…」
記憶を掘り起こしながら、昔やっていたことをもう一度再現してみる
「おばあちゃん、明日も元気でいてね」
そう言い、ソレを握った手に力を込める
昔からやっているこの行動に大して意味は無い
けれど、なんだか、
「少し…気持ちが楽になったかも…ね」

仏壇から笑顔でこちらを見ている祖母を見て、
自然と涙がこぼれてきた
片付けをしようと実家に戻ったが、様々な思い出で頭がいっぱいになってその場に座り込んだ
「ずっと、大切に持っててくれたんだね…」
もう一度、手に力を込めた

生前、祖母がくれた綺麗なペンダントに

力を込めて