独占欲
私メディアなんて嫌いよ、だって貴方が私のものだけじゃなくなっちゃうもの。
私、束縛は嫌いよ、だれにも縛られたくないわ。
私、貴方の恋人なんか嫌いよ、貴方は私のものなんだもの。
あいつの噂話、あの子の熱愛放送も全部聞き流して、私の声だけを聞いていてね。
ほらまた貴方を見る私の目が落ちてしまいそう。
貴方が頭に浮かぶから眠れないのよ、目の奥が痛いわ。
ねえ助けてよ、きっとこれは病気よ。もう数十年しか持たないかもしれない。
貴方にしか治せないでしょう。
夢から覚めるために飛び込んでしまうの。
貴方と同じ生き物にはなれないから、貴方は水中を自由に泳げる、目も開けられるかもしれないけど、私は
ヒトだから、水の中では目は開けられないし、息ができないのよ。
ねえだから、私のワンルームに大きな水槽を用意するから、そこにいてよ。ずっとずっと、私が溺れそうになったとき、助けてくれたじゃない。どうせ出会ったときも貴方は狭いプールにいたじゃない。
貴方は望んでいるんでしょう?
私が息をすることを。
私は貴方のためなら、貴方と同じ生き物になれないなら、もう助からないわ。
そんなに変わっていないみたい。心はそんな簡単に変わらないんだ。
でも、なんだか去年よりも前に進んだんだと思う。
大嘘
友情の延長線に生まれた感情を、愛情とも恋心とも言わないから、今更許してなんて言わないから、遠い街で一緒に歩けたらよかった。
君が親友だったあの頃のまま、私の手をつかんで。
もうどうしたら、変わっていく君を止められる?
一歩より遠く、一段より高く、ずっと君が離れていく。
この気持ちを恋心と呼べたら、どれほど美しかったかな
それでも、戻れない私たちは別の道を歩くしかないんだ
僕が貴方と同じ道を歩けない。君が君でなくなる。
私が私でなくなる。
それは止められない。
君が死のうとした夜、私はどんな夢を見た?
私は微かに、君の死を望んだ。
君が君を捨てるなら、僕のだけになってほしかったよ。
そこから歩けないくらいなら、今度は私が私捨てるから
貴方が拾ってね。
僕には
僕の部屋は大きな庭だった。
隅の木陰に隠れれば、誰からも干渉されなくてすむし、毎日手入れされて綺麗だけど、誰も見向きもしない。時々お客さんが外廊下から横目を流すだけ。
御屋敷の内側は、僕の部屋なんてない。なるべく人目につかないように、隠れて居なくちゃいけないから。気に障ると、大きな蔵に閉じ込められる。真っ暗で怖い。牢屋みたいなところがあって、昔一度だけ、人がいるのを見たことがある。忘れろとお父様に言われた。その頃はまだ家族がいたのかな?
でも、たぶん僕のいられるところなんてない。
お家はあるのに僕の家族はいない。
ある日突然、僕の部屋がなくなってしまった。
御屋敷からも遠く離れた。
もうあの綺麗な庭にいられないなんて、少し寂しと思ったけど、それよりもずっと嬉しかった。
家族のお家ができると思った。僕に内側の部屋ができるかとわくわくした。
新しい僕の部屋は山だった。前よりも大きな木と広い空間。荒れてはいるけれど、静かで心地良い。
建物は、大きな御屋敷から、小さな小屋になったけど、僕にはあんまり居心地のいいところではなかった。
やっぱり僕には内側は似合わない。居てはいけないんだ。
家族の家ってなんだろう?
僕の庭のすぐ下に、一軒だけお家があった。
僕ぐらいの年の女の子が一人と、大人の女の人と大人の男の人が住んでいるみたい。
その女の子は、時々女の人に外に引っ張られていくのを見る。
女の子は泣いてドアを叩いてた。
なんでだろう?内側よりも外側の方が居心地が良いのに。
悲しい思いをしなくていいのに。
あんまり酷く泣くものだから可哀想で、話しかけに行ってみた。
僕を見て、泣きやんだ。と思ったら今度はもっと酷く泣いてドアを酷く叩き始めた。
するとドアがあいて、女の人が出ててきた。
一瞬驚いて、すぐに僕を睨んで、女の子を抱きしめた。
僕に言った。
「うちの子に何したの?!あんた誰よ!どっか行って!!!」
怒鳴り声が耳に残った。
僕はただ、僕の庭に来ないか?と聞いただけなのに。
それから、女の子は外に引っ張られることはなかった。
女の人が洗濯を干したり、女の子が男の人と楽しそうに遊んだりしていた。
僕はふと思った。
あれが家族というものなのか?あの女の人がお母さんで、男の人がお父さんなのか。
お父さん。
昔、僕のお母さんは僕に言った。
「お母さんはお父さんに恋したの。愛されたの。愛したの。そうやって幸せになるのよ。」って。でもそのお父さんはお母さんを牢屋に入れていた。お父さんはたくさんの子供がいて、いつも綺麗なドレスを着た、女の人のそばにいた。
お母さんは愛をもらったけど、愛があれば家族じゃないの?
お母さんのもらった愛は、なんだったんだろうね。
僕は何なんだろう。
恋
もう心臓を早く動かすのは疲れたし、心が痛むのも嫌なの。
もっと心地良かったらいいのに。
いつもいつも、疲れるばかり。
なにも聞きたくなくなるじゃない。