私は知っていた。
私は、あのさみしくつらい背中をみて育った。
そしてそれを恐れ、見て見ぬふりをした共犯者だった。そして同様に被害者であった。彼女もまた、被害者だった。それから加害者になった。
私は、あのひどく玄関からリビングまでの廊下が狭く、壁は薄く、ヤニの染みついた壁に閉じ込められ、首を絞めあってきた。
いつか、わかって欲しかった。だけど彼女の傷がそうさせないなら、もうずっとさようならのままでいい。
ごめんなさい。それと、くれた幸せにありがとうだけ。
私はわからなかった。
愛と苦しさが。本当か嘘か。
本当に私が大切だったの?それともそんな感情は微塵も無かったのか。
人間って頑張って足踏ん張ってないと簡単に堕ちるんだね。
刺繍って柔らかくて優しい世界だよね。春と秋しかないみたい。むさ苦しい夏も孤独な冬もない。温かい世界だ。猫は春と秋に恋をするでしょう?人間は夏と冬のが恋しそうだけど。真っ暗な夜、もう冬かいつかもわからないまま。
貴方のことを忘れようとしてから、好きな花も好きな場所も、描きたい絵も、あふれる言葉も何もかもがなくなった。空っぽになった。自分はなにかアイデンティティがあると思ってた。でも全部貴方から取ったものを自分の中に入れただけだった。私の心の中にあった、美しい青の花瓶には、オレンジと赤の花がきれいに咲いてた。水はだんだんなくなって、花は枯れて、花瓶は色あせて、ただの透明な瓶になった。中身もなんにもない。
そろそろ壊れちゃうんじゃないかと思うくらい。空っぽでなんにもない。
存在しない花を描くとき、知らない世界の記憶を掘り起こしているんだ!今!って思いながら。
この花はこれから出会う特別な人から贈られた花だって考えて、まだずっと待ってるんだ。
人って一人一人個性があるように見えて、以外と分類できるところが嫌。でも隠れていたいときもある。おとなになりたいって思いながら、ずっとこどものままでいたいって、あの子のことが嫌いって思うのに、あの子が大好きって、迷っているの。道に迷ったわけじゃない。道なんてない。きっと1つの大きなホールの中で障害物競走でもしてるみたいに。障害物なんて段ボールみたいなもので、壊そうと思えば壊せるんだけど、戦う仲間とライバルがいるし、審判がいて、応援席にたくさんの人がいる。だから、段ボールだと分かっていても壊すことができないの。だけど壁が段ボールだと分かったなら、ぶつかったって、飛び越えるのに失敗したって怖くないね。私はきっと、1つの大きなホールの中で、見つけたい宝でもあるんです。
たぶんすべてが違う。
今まで歩いてきた道や、育ってきた街で息ができなくて泣きじゃくってたとき、1枚のCDの中から流れる音楽と声だけを希望にして、理由にして生きてきた。でもそれがプツリプツリ切れ始めて、だんだん分からなくなっていった。大人になることだって、言われても、大人になるくらいならこのまま夢の中にいたかった。ねえ、このまま私はこの曇った空に蓋をされたまま、夢見た世界は一生訪れないの?貴方は私より確実に先に死ぬ。苦しい。今1番苦しいのは貴方の代わりがいないこと。偽物で間違えただけだったって、生き抜くために必要だっただけで、これからの人生にはいらないのよって教えて、誰か。もうどうやってこの景色と向き合えばいい?こんな、自分と、こんな肉体と。なんの意味もなくなった。
もう終わってくれないかな。