・6『好きな本』
グラウはスキュラの為になら地上の喜びを、
それ以上のものを海に持ち込めると思っていた
海の神の一員ならそれくらい出来て当然なのだから。
しかし好きな本を持ち込めるか?とスキュラ聞かれ
考えた末に海に書庫を作ろうかと考えた。彼女の為だけの海の図書館だ。
海底にスキュラの好きな詩を刻んだ岩を置くのもいいかもしれない。
しかし海の中で読書?
グラウは元木こりで字が読めず書けなかったのでキルケーに相談することにした。あの魔女なら自分の力になってくれるだろう。
【続く】
・5『あいまいな空』
空と海がグレーがかり似た者同士な色
境界があいまいになってきた。
スキュラは決めかねていたが
やはり人間をやめて海の神?に仲間入りするのには抵抗がありまくりだった。
フツーに歳を経て
美しさなど関係のない年齢までまってもらって
俗世に未練がなくなれば
その時は海にこの生をささげても良かった
あの男に会ったら断ろう
とりあえず、今は
【続く】
・4『あじさい』
グラウはスキュラに東洋のバラを渡した
スキュラはその美しさに目を奪われた。
朝日を浴びた波打ち際に似た青い色と薄い緑ともつかないグラデーションだった。すこし紫のところもある。様々な色の小さな花が折り重なってブーケとなりスキュラに挨拶をする
あなたの肌に良く映える、珍しい花でしょう。あじさいというらしいです。
海の住人になっても貴女に不自由はさせません。
地上の喜びもあ全てなたの元へ運びましょう。
グラウは言うのだった
【続く】
・3『好き嫌い』
本当はあの男が今日もいるかもしれない、とスキュラは浅瀬に足を遊ばせながら思った
海の神にだって私はモテる
神かどうかは本当のところはわからない
ただの半人半魚かもしれない
あるいは化け物。
元は人間だったと、
海の神々に愛され
神の座を与えられたと、
貴女にもその座を与えられると。
街にこのままいても働き口はないかもしれない。
望んだ嫁ぎ先があるとも限らない
美しいまま海に住むのも悪くないかもしれない……
好き嫌いを言っている場合ではないのかも
私が美しいのは期間限定で
それ以外の価値が自分にも他人にとってもあるとは思えなかった
【続く】
・2『街』
スキュラは自分の住む街が嫌いだった。
特に男達は私を向こうから歩いてくる
無料のエロコンテンツくらいにしか思ってない。
ほんとうに嫌だ。
私はいつも海に来てしまう。だれも来ない浜辺があって
もったいつけて、誰に見られるわけでもないのに
格好つけて、ダルくて、訳アリそうな女を演じながら
歩くのがすきだ。
ほんのちょっとだけ浅瀬に入る。
早く誰かと出逢いたい
運命の誰かと。
【続く】