・3『好き嫌い』
本当はあの男が今日もいるかもしれない、とスキュラは浅瀬に足を遊ばせながら思った
海の神にだって私はモテる
神かどうかは本当のところはわからない
ただの半人半魚かもしれない
あるいは化け物。
元は人間だったと、
海の神々に愛され
神の座を与えられたと、
貴女にもその座を与えられると。
街にこのままいても働き口はないかもしれない。
望んだ嫁ぎ先があるとも限らない
美しいまま海に住むのも悪くないかもしれない……
好き嫌いを言っている場合ではないのかも
私が美しいのは期間限定で
それ以外の価値が自分にも他人にとってもあるとは思えなかった
【続く】
6/12/2024, 12:06:11 PM